ISBN:4103314087 単行本 帚木 蓬生 新潮社 1997/05 ¥2,625
故国が終戦と同時に憲兵に牙をむいた。日本のために諜報活動に明け暮れた報いが、「戦犯」の二文字だった―。身分を隠し名を偽り、命からがら辿り着いた故国も、人身御供を求めて狂奔していた…。諜報活動に明け暮れた香港から苦難の末に辿り着いた日本。が、祖国は戦争の人身御供とするべく逃亡憲兵に襲いかかった。国家とは何か。責任とは何か。愛とは、死とは…。元憲兵の逃亡行、緊張感とヒューマニズム溢れる2千枚。
お勧めされたので借りてみたものの、電話帳のようなぶ厚さに圧倒される。読んでも読んでも終わらなくて、どんどん伸びる麺類を食べている時のような気分だった。
そして、内容も重苦しい。国の命令でやらされていた事によって、戦争犯罪人として逃亡する事になる主人公。しかも、被害を被った中国や、戦勝国(敵国)からのみならず、同胞であったはずの日本人からも追われるというところが、どうしようもなくやるせない。
戦争犯罪人を裁く権利など無いと思う。上官の命令でやっていたBC級戦犯に関しては、特に……。偽善者たちは、人道上問題があるとか、同じ人間としてしてはいけないとか、自分だけは安全な立ち位置から奇麗事を言うけれど、そいつらは、自らがその立場であったなら、拒否する事が出来るのか!? 胡散臭い事言うようなヤツに限って、自分が当事者なら嬉々としてその任務をこなすと思うのだが。
A級戦犯に関しても、もし罪があるとすれば、それは戦争を始めた事ではなく、戦争に負けてしまった事に対する罪しかない。故に、同胞に戦略上の失敗を糾弾されて然るべきではあるが、戦勝国による裁判は、ただのリンチである。
もしも大日本帝国と第三帝国が勝利していたなら、戦犯として処刑されていたのは、トルーマン、マッカーサー、アイゼンハワー、そして、史上最悪の男カーチス・ルメイ等の面々であった筈だからである。
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