ベガーズ・イン・スペイン
2010年3月13日 SF特集21世紀初頭、遺伝子改変技術により睡眠を必要としない子供たちが生まれた。高い知性、美しい容姿だけでなく驚くべき特質を持つ無眠人は、やがて一般人のねたみを買い…「新人類」テーマの傑作と高く評価され、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル読者賞を受賞した表題作をはじめ、ネビュラ賞、スタージョン記念賞を受賞し、“プロバビリティ”3部作のもととなった「密告者」など全7篇を収録。
日本で独自に編集されたナンシー・クレスの短編集。プロバビリティ三部作の元となった短編「密告者」も入っている。基本設定は似ているのだが、やはり長編になっているもののほうが、物語に奥行きが出て完成度も高い。
結構、SFにしては地味で淡々とした話が多いのが微妙なところだが、遺伝子改変を行える社会となった「ベガーズ・イン・スペイン」は面白かった。睡眠を必要としない無眠人は、通常の人間よりも能力が高く、やがて妬みにより排斥されて行くという、それ何てガンダム・シード? 状態に。
実際のところ、ジーン・リッチと通常人の間に妬みは発生しても、対立して争いになったりはしないと思う。遺伝子を改変出来るようになっても、実際に利用出来るのは一部の金持ちだけだし、権力を握っている側は、ほとんどの場合において圧倒的に強いのだから。
これまでで、権力側がしてやられたのなんて、ロシア革命くらいじゃないのか? ジーン・リッチ程度で争いになるのならば、今現在の資本主義社会体制だって、金持ちと貧乏人の対立によって、資本家達が抹殺されている筈である。
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プロバビリティ・スペース
2010年3月12日 SF特集ケンブリッジの自宅から物理学者カペロが誘拐された!現場を目撃した娘のアマンダは身の危険を感じ、心理学者のマーベットを頼って月へ、そして火星へと向かう。だが、マーベットはカウフマンとともに世界へと向かっていて不在。しかも軍強硬派のピアース大将がクーデターを起こし、火星は戦場と化していた。やがて実権を掌握したピアースは、敵を殱滅すべく、最強の武器である人工物をフォーラーの母星系に送りこむが…。
ジョン・W・キャンベル記念賞受賞。
先進文明の遺物を解明した科学者が何者かに誘拐されて行方不明となる。たまたま現場に居合わせてしまった娘のアマンダは、自らも身を隠し、父を助け出そうとする。しかし、いつの間にか反政府活動組織に囚われており、ややこしい事になってしまう。
組織から逃げ出すものの、今度は修道院に隠れ住む事に。さらに、火星でクーデターが発生し、多くの人命が失われる。エイリアンの攻撃で人類が滅ぼされそうな時に、何をやってんだか……。
クーデターで人工環境が破壊され、死を待つばかりとなったアマンダは、何故か都合良く現れたイケメンに助け出される。
一方、前作で活躍したカウフマンは、退役軍人となり、付き合い出した超感覚女と一緒に、ワールドへ潜入する。現地に残っている二名を救出する事と、行方不明になっている天才科学者カペロを探し出す事が目的なのだが……。クーデターで新たに権力の座についた将軍が、とても危険な男だったから、宇宙の破滅を阻止すべく、自暴自棄としか思えない、とんでもない賭けに出る事になる。
攻撃的なエイリアンとの星間戦争が続いているのに、人類は反戦活動家や、野心を持った軍部のクーデター等、足を引っ張りまくる要素が満載。全然結末が見えて来ないので、どうやって終わるのかと思ったら、かなり力技な展開で戦争終結となる。
敵の本拠地を叩いてご都合主義的にハッピーエンドとはならなかった。天才科学者と娘だけ見れば、ハッピーエンド的なのかもしれないけど、なんだか釈然としない幕切れだなぁ。
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プロバビリティ・サン
2010年3月11日 SF特集地球で謎の人工物の報告書を目にしたカウフマン少佐は、世界の山中に秘められた人工物こそ、敵フォーラーを撃破する鍵になると確信した。太陽系随一の物理学者カペロを加えた調査チームを編成したカウフマンは、一路世界へと赴く。やがて聖なる山々に分け入り、いくつもの洞窟をくぐり抜けて、人工物のもとにたどり着くや、ただちに発掘作業に取りかかった!一方、フォーラーの生け捕り作戦も極秘で進められていたが…。
三部作の第二部。一作目が全然盛り上がらず、読んでいて苦痛だったのだが、これは少しSFっぽくなっている。前作は、エイリアン文明の共有現実や花を贈る風習などが、まるで異星人文化史、風俗史でも読まされているような感じで、辛かったからなぁ。
初めて、生きたフォーターの捕獲に成功するのだが、ワールドの聖地に埋まっていた先進文明の遺物を確保する軍艦内に囚われるので、結構忙しい事になる。聖地の遺物から放たれる何かが、ワールドに住むエイリアンに作用し、共有現実を作り出している事が明らかとなる。
遺物を持ち去ると、ワールドのエイリアンに対する影響が大きすぎると反対する科学者がいるのだが、フォーラーに対抗出来るかもしれない手段がこれしか無いのだから、仕方が無いだろう。人類だけが滅亡するならまだしも、フォーラーがこの星系に到達すれば、きっと現住生物も滅ぼされてしまうのだから、持ち出さなくても時間稼ぎにしかならないと思う。人類存亡の危機的状況で持ち出しに反対するなんて、もはや売国奴どころではなくて、売人類奴レベルだよなぁ。
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プロバビリティ・ムーン
2010年3月10日 SF特集22世紀半ば、太陽系外縁でのちにスペーストンネルと呼ばれる不思議な建造物が発見された。このトンネルは人類に外宇宙への扉を開き、いくつもの新世界が発見された。だが、やがてそうした新世界で、人類は異星種族フォーラーと遭遇、交戦状態に入った!敵の強大な軍事力に圧倒され、人類は苦しい戦いを強いられる。そんなおり、新世界のひとつ「世界」で、戦況を一変させる、強大な力を秘めた人工物が発見されたが…。
三部作の第一部。謎の先進文明によって造られたスペーストンネルが発見され、各地に人類が広まった未来世界。見つかった知的生命体のうち、大半は人類よりも遅れていたが、異星種族フォーラーとは交戦状態に陥り、人類のほうが押されている。
新たに発見された謎の人工物が存在する新世界のひとつが舞台となるのだが、そこにいる種族の、現実、非現実を共有する文化に馴染めず、読み進むのに苦労する。物語が淡々と進みすぎて盛り上がらないし、登場人物の誰も主役っぽくなくて、誰を中心に捉えて読んで行けば良いのか分り難い。強いて言うならば、この星に住む地球外知性体で、罪を犯して非現実者となった女性が主役か。
先進文明の遺物は、この世界では月として認識されているが、何のために使うものなのかは、最後まで謎のまま。これを狙ったフォーラーも来襲し、太陽系まで運ぶか、それが無理なら敵の手に渡る前に破壊しようとするのだが……。
星間戦争中なのに、辺境惑星の遅れた種族相手に、科学者達が調査しているばかりで、ちっとも楽しめなかった。
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突拍子もない事故で、最愛の女性と離ればなれになったアーサー。放浪の末、サンドイッチ職人としての平安な人生を手に入れるも、突然トリリアンが彼の娘を連れて現れる。一方フォードは、銀河ヒッチハイク・ガイド社の異変に疑問を抱き…。並行宇宙を舞台に繰り広げられる、大傑作SFコメディ最終巻。
冒頭から、光速は超えられないけど“悪い噂”は別の法則に従うから超えられるというブラックに笑った。
無くなったはずの地球が残っているけど、アーサーは平行宇宙で迷子になり、自分がいたはずの地球に戻れなくなってしまう。銀河ヒッチハイクガイドの本社は乗っ取られていて、フォードのほうもややこしい事になっている。
スタヴロミュラ・ベータでアーサー絡みのトラブルに巻き込まれて死亡したとかいう宇宙人に襲われた事があるので、この先何があっても自分は死なないと思い、達観気味のアーサー本人。(スタヴロミュラ・ベータにまだ行った事が無いので。ちなみに、謎に包まれていたスタヴロミュラ・ベータという場所については、本書で明らかとなる。)
宇宙船の事故で僻地に住む事になるのだが、知らない間に娘まで生まれていた! しかも、すでに思春期を過ぎた状態。いきなり母親から産んだ覚えの無い娘を押し付けられるアーサー。
しかし、母親に置いて行かれた娘は、銀河ヒッチハイクガイドを使って宇宙船を呼び寄せる。降りてきたフォードを殴り倒し、宇宙船を奪い取って何処かへ。とんでもない娘である。誰に似たんだか。
アーサーの娘は自分の居場所を求め、本来の地球まで行くのだが、太陽系にはヴォゴン人が……。なにこれ!? まさかのBAD END!! なんでこんな、何もかも投げ飛ばした感じで終わっているのか。「こんなの銀河ヒッチハイクガイドじゃないや!」という意見には、大いに賛同したい。
6冊目が書かれる前に、ダグラス・アダムスが急死してしまったからなぁ……。
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さようなら、いままで魚をありがとう
2010年2月24日 SF特集はるばる十万光年をヒッチハイクして、アーサー・デントがたどり着いた先は、なんと八年前に破壊されたはずの地球だった!!イルカが消えてしまったことを除いては、前と何も変わらない、この“地球”の正体は!?アーサーは、運命の恋人・フェンチャーチと共に、真相究明の旅に出ることに…。大傑作SFコメディ『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ第4弾。
うーん、最初の勢いが無くなってしまったなぁ。なんだかよく分からないドタバタコメディが続いているのだけど、笑うツボがよく分からないのは、人種が違うから? 欧米の人だと、ツボに嵌れるの?
悪ふざけが控えめになった分、いきなり恋愛要素が膨れ上がり、アーサー・デントが運命の恋人と出会う。フェンチャーチ相手に、アーサーが重要な話をしようとする度、横から邪魔をするおばさんがウザすぎる! もっと空気を読め(笑)。
見知らぬ男とビスケットを取り合うシーンは笑ったけど、これは著者が実際にやらかした事らしい。自分のビスケットを勝手に食う相手に対抗しているつもりが……。相手の人が、本書を読んでいると良いなぁ。
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宇宙クリケット大戦争
2010年2月23日 SF特集遠い昔、遥か彼方の銀河で、ギャクサツ集団クリキット軍の侵略により銀河系は全滅の危機に陥った。封印を破って甦った彼らを迎え撃つのは、よりによってアーサー・デントとその一行。果たして宇宙は救えるのか!?大傑作SFコメディ第3弾!銀河大統領の若き日日を描いた本邦初訳「若きゼイフォードの安全第一」収録。
うーむ。先の二作と比べて、なにがなんだかよく分からなくなっているなぁ。単品で考えれば、それほど悪くは無いのだろうけど、期待値が高かっただけに、微妙。
過去世界の地球に置き去りとなったアーサーは、ゼイフォートとともに、突如現れたソファーを追いかけて、現代世界のローズ・クリケット競技場へタイムスリップ。何故か、全銀河の敵みたいになっている異星人と対決する事になるのだけど、ドタバタしすぎで脱線も多いので、いまいち波に乗れない。
当時、アメリカで言葉狩りが流行っていたので、“ファック”という言葉が使えず、アメリカ版だけ“ベルギー”が下品な差別用語という設定になっているのが笑える。日本語版は、ちゃんと本国バージョンで読めますが。誰が最初に“ベルギー”を駄目ワードとしてジョークに取り入れたのかは謎である。
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宇宙の果てのレストラン
2010年2月22日 SF特集小腹を満たしに、宇宙の果てのレストランへ行く途中、攻撃された“黄金の心”号。乗っていたアーサーたちは、離ればなれになってしまう。元・銀河大統領ゼイフォードと鬱型ロボットのマーヴィンが、とだりついた星で遭遇したのは!?宇宙を揺るがす迷真理を探る一行の、めちゃくちゃな冒険を描く、大傑作SFコメディ第2弾。
前作からそのまま続いて、ひたすら馬鹿っぽいまま。ヴォゴン人から攻撃されているのに、船のコンピューターは美味しい紅茶の入れ方を調べるのに忙しくて、逃げも隠れも反撃もしてくれなくて死にかけたり、時間を超えて時の終わりでご飯を食べたりと、登場人物がひたすら振り回されて馬鹿な行動をしてしまうのだ。
宇宙の果てのレストランで世界の終わりを見た後は、駐車場? に停めてあった宇宙船を強奪するも、操作方法がわからず、致命的な場所に飛ばされて死にかける。ご都合主義的に何故かそこに設置してあったテレポート装置で逃げるが、今度は妙な移民船の中へ。
それは、役に立たないから姦計によって祖国を追い払われてしまったゴルガフリンチャム人の移民船だった。航路が自動設定されているから、またしても成す術が無いままに、ある惑星へと墜落してしまう。実はそこが200万年前の地球であり、ゴルガフリンチャム人の正体が明らかとなる。彼らが飛来(というか墜落)した事で死に始める原住民は、ネアンデルタール人なのだろう……。
ゴルガフリンチャム人(地球人)に定められた200万年後の運命を知っているアーサーは「銀河ヒッチハイク・ガイド」を川へと投げ捨てるのであった。
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銀河ヒッチハイク・ガイド
2010年2月22日 SF特集銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。どこをとっても平凡な英国人アーサー・デントは、最後の生き残りとなる。アーサーは、たまたま地球に居た宇宙人フォードと、宇宙でヒッチハイクをするハメに。必要なのは、タオルと“ガイド”―。シュールでブラック、途方もなくばかばかしいSFコメディ大傑作。
表紙と題名が面白いとは思っていたが、まさかこんな馬鹿っぽくて面白い話だとは思いもよらなかった。皮肉もふんだんに用意されていて絶品である。
自分の家が高速道路建設で取り壊される事になったアーサー・デントは抗議行動を起こし、ブルドーザーの前に寝そべるが、何年も前から(地下の薄暗い掲示板や閲覧出来ない引き出しにて)工事は告知してあったのだから、今更抗議しても無駄だと言われてしまう。必死で家を守ろうとして寝転がるアーサーは、友達のフォードに無理やり引っ張られて、飲みに連れて行かれるのだが、酒場でフォードから地球が間もなく終わってしまうと告げられるのだ。
フォードから地球の最後を告げられた直後、銀河超空間土木建設課が飛来して銀河外縁部開発計画に基き、超空間道路建設予定宙域にある地球は取り壊されると通告する。異星人は、アルファ・ケンタウリの事務所で50年も前から告知していたのだから、今更文句を言っても遅いと工事を始めてしまう。
地球は原始的な微生物さえも消滅してしまうが、アーサーだけは生き残った。友達のフォードが、実は地球人じゃなかったからである。転送光線で最寄の宇宙船へと乗り込んだ二人は、宇宙ヒッチハイカーと化すのだが、船外へ追い出されてしまう。息を止めたら30秒は生きられると頑張る二人だったが……。
物理法則や実際のデータを思いっきり無視して暴走する、限りなくお馬鹿なSFなのが素晴らしい。表紙にある宇宙クジラはただのデザインかと思ったら、本当に登場して笑った。
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留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…。第三回小松左京賞受賞作。
「宇宙は“無”から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか? 無なら、そこら中にある――」
冒頭の掴みは完璧である。こういうズレたセンスは大好きである。実際ところ、無に見える部分にも何かが詰っているのだが。物質を限界まで拡大していくと、物質と物質の間に横たわる空間は無と言えるのかもしれないけど、それでも空間はあるよなぁ。本当の“無”なんて、人間の心の闇にしか……。
それはそうと、文庫版の帯が気になります。映画化!? 本当に映画になるのか? アニメ化のほうが良いんじゃないのか? 巨大な粒子加速器以外はSFっぽい物が出てこないから、国産映画でも何とかなるのかもしれないけど、ペラい映画になりそうで嫌だなぁ。
老人が感じた宇宙に関する疑問が元で、宇宙の作り方を研究する事になるゼミ生達。もっとも、天才少女と主人公以外の全員が宇宙は作れない派にまわる事になるので、凡庸大学生である主人公青年には苦難が待ち構えている。人類には作れないだろうけど、少なくとも1個は出来ているのだから、宇宙を作るためのレシピは存在するはずである。人類が拙いから知らないだけで、答えは必ず用意されている。しかし凡庸大学生に作れるとは思えない。
誹謗中傷、盗撮、マスコミの悪意ある攻撃、人為的に生み出された自らの存在意義……。いろいろあって精神が不安定になった天才少女は、シミュレーションからある答えを導き出し、粒子加速器を使って宇宙を発生させようとするのだが……。実際には、そんな簡単には作れないだろうけど、実験の成功が、今の宇宙の終りだなんて!
それにしても、解らない事が多すぎる。解らないままに、天才が見つけた解答を覚えて、とりあえず知った事にしているのが凡人であるが、それで良いと思う。全ての事象を本当に理解するまで頑張るとなると、上手く行けばエジソンみたいになれるが、そうじゃなければ単なる馬鹿で終わってしまう。
本書でも、素粒子、量子力学、電磁気力、重力、強い力、弱い力……、次々と難しい話が出てきて辛くなりそうなところ、主人公も出来が悪い理系学生という設定なので、読み手だって物理学の理論なんて判らないまま、素直に読み進めてOKです。もし天才少女のほうが主人公なら、嫌味なだけで終わっただろうな。
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きみがいた時間 ぼくのいく時間-タイムトラベル・ロマンスの奇跡-
2010年2月8日 SF特集至上の愛は時を超えられるのか? 映画化(東宝)、演劇化(キャラメルボックス)された、あの「クロノス・ジョウンターの伝説」を超える書き下ろしに、定評のカジシン短編を揃えた珠玉のアンソロジー。演劇集団キャラメルボックス主宰の成井豊との情熱対談も収録。
タイムトラベルを題材にした短編集。うちひとつは「クロノス・ジョウンターの伝説」と同じ世界観を共有する。クロノス・ジョウンターとは別の理論によって過去へ行くのだが、事故死した妻を救うために跳躍するというお約束は変わらず。やはり、女が死ぬんだよな。男が死んでも女は過去を改変せず、別腹人生を謳歌しそうだしなぁ。
「きみがいた時間 ぼくのいく時間」今回は別理論なので、過去から弾かれたりはしないのだが、行ける先は調整出来ないのだ。螺旋状の時間を重ねた時に、現在と合わさるのは39年前なのである。つまり、妻や自分が生まれる前の世界へ飛んで、その時が来るまで待ち続けなければならないのだ。細かい部分でタイム・パラドックスが解消されていないけれど、気にしない気にしない。
「江里の“時”の時」は、古代で石を動かした事によって別の未来へと迷い込み、自分の代わりに存在してタイムマシンを開発した女性に恋する科学者の物語。だが、別の未来へは干渉する事が出来ない。そのうち、彼女の世界はある施設の事故で発生した連鎖融合現象で滅亡寸前だと知り苦悩する。
「時の果の色彩」は、未来の自分自身から送られたタイムマシンで過去と未来を行き来する社長の話。この話の設定では過去も未来も現在を起点に19年しか存在していないというもの。時間の波が現在を中心として、その範囲にしか広がっておらず、そこから向こうの過去は消滅してしまい、未来はまだ形成されていないのである。存在しない過去へは行く事が出来ず、病死した女と会えなくなる時期が目前に迫り、一人の新入社員にある事実を告げる。
「美亜へ贈る真珠」は。航時機と呼ばれる未来への一方向タイムマシンへ入った男と外界へ残された女の話。航時機の中は時間の経過が遅くなり、外界の一日が一秒にしかならなくなるのだ。時がほぼ止まったままの男と、それを見つめ続けながら年老いていく女の物語。
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ホーキング博士に、自分の足で歩いてもらいたい!無名の天才発明家・機敷埜風天は、壮大な夢を実現すべく、脳波を直接受信して動作をサポートする介護支援機器「BF」を開発していた。しかし、引っ越してきた横嶋町は、二組のやくざが抗争を繰り返す、超危険地域だったのだ…!想像力がエスカレートしていく痛快スラプスティック長編。人気作家・梶尾真治、待望の最新作。
題名からは重苦しい悲劇の物語であるかのように感じられるが、実際にはコメディ・タッチな軽いSFだった。
身体が不自由なホーキング博士に使ってもらうと、脳波誘導ボディフレームという妙な介護機械を試作する天才とその友人。世間ズレした天才は、昼夜問わずボディフレーム開発のために騒音を出すものだから、近所から苦情が来て引っ越す事になる。不動産屋から格安物件を紹介してもらい引っ越した先は、黒澤監督の「用心棒」のように、敵対する暴力団が争う超危険地域だったのである。程なく抗争へ巻き込まれる事になった二人は、脳波誘導ボディフレームを駆使して組長の死を隠蔽しなければならなくなるのだが……。
馬鹿っぽいけど面白い。ちょっと昔の日本SF臭がふんだんに漂っていて、力を入れずに読めるのが良いですね。
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たったひとつの冴えたやりかた
2010年2月8日 SF特集やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。元気少女の愛と勇気と友情をえがいて読者をさわやかな感動にいざなう表題作ほか、星のきらめく大宇宙にくり広げられる壮大なドラマ全3篇を結集!
お勧めのSF作品として取り上げられる事が多いので、名前だけは知っていたのだが、今まで未読だった。途中まではコーティと寄生エイリアンの友情を描いたジュヴナイル小説かと思っていたら、衝撃的な結末を迎えてしまいました。なんだか救いが無いよなぁ。それが「たったひとつの冴えたやりかた」だとしても、ちょっと悲しすぎる。この衝撃の前に、ハードボイルド風味の第二話と、星間戦争を危うく回避した第三話が霞んでしまいました。
作者が実は女性で、寝たきりの夫を射殺した後に自らも自殺しているという衝撃の結末にも驚いた。かねてから自殺の取り決めがあったらしいので殺人事件というよりは心中と捉えるのが妥当かもしれない。
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パズルの軌跡―穂瑞沙羅華の課外活動
2009年12月18日 SF特集ようやく就職した綿貫基一の元に、一通のメールが届いた。それは、“ネオ・ピグマリオン”という怪しげな会社から接触を求めるものだった。渋々担当者と会った綿貫だったが、彼らの依頼は、資産家子息の失踪事件の調査を、量子コンピュータを開発した天才美少女・森矢沙羅華にしてほしいというものだった。綿貫は、普通の女子高生に戻ろうとしている沙羅華を説得し、調査への協力を取り付けたのだが―。沙羅華と綿貫に、待ち受ける難事件とは!?『神様のパズル』の待望の続編、ついに刊行。
「神様のパラドックス」とも関連があるけれども、直接の続編は「パズルの軌跡」となっている。まさか、一作目の「神様のパズル」がシリーズ化して続くとは思わなかったのだが、SFとしてはどんどんスケールが小さくなって微妙。
これ、ほとんどラノベのノリなんだけど、SFなの? 粒子加速器以外、SFっぽくない。
一作目に出てきた田んぼは本編にあまり関係ないのだが、やたらと拘って気持ち悪い。他の人に田んぼを耕せと五月蝿いのだが、じゃあお前がやれと言われれば、自分は忙しいから無理とか言い出すし。何この自分勝手すぎるヘタレ主人公は……。
ネオ・ピグマリオンという怪しい会社から接触された主人公の綿貫。彼は、天才美少女に失踪事件の調査依頼をするための仲介役にさせられてしまう。久しぶりに天才と再会するのだが、依頼内容を聞いた沙羅華がハッキング行為で辿り着いたのは、怪しげなサイト。
その後、穂瑞沙羅華本人まで行方不明となる。彼女を追って、自殺サイトかもしれないページから申し込み、怪しげなセミナーに潜入する綿貫。しかし、沙羅華に合流した後も、グダグダしているだけで、いまいち活躍していない。それどころか、足を引っ張る事になって格好悪い。
潜入先でゴスロリ美少女が出てくるのだが、ちょっと妙な方向に狙いすぎなんじゃない? 「スペースプローブ」の時も、カラオケでやたらとメイドが出てきてウザかったのだが。そういうヲタ要素を入れるより先に、ちゃんとしたSFに仕上げて欲しかった。この内容なら、別にラノベで十分だと思う。
穂瑞沙羅華という名前は、ラノベ風の痛い名前をつけただけなのかと思ったら、元ネタは超有名なあの人なのか!! 名前のネタバレについては、あとがき参照。
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なんか表紙が変わっていると思ったら、「神様のパズル」じゃなくて「神様のパラドックス」だった。世界観は同じようだが、続編ではないし、ほどんど関係も無い。一作目が手元に無いので確認出来ないけど、大学は同じなのかな?
途方もなく金がかかる量子コンピューターを造ったは良いものの、投下資金を回収する目処が立たず、困った事になる開発者の男。占い同好会に仮所属している、大学に入りたてな女の子。二人が出会い、ヒントを得た開発者は、仮想世界で神を作り、占いをしようとし始める。
量子コンピューターに神の代わりをさせようというアイディアは面白いのだが、開発者は暴走しすぎるし、主人公の女は悩んでばかりで煮え切らないし、開発陣にいる女性は神を創るという発想に対して過度に拒否反応を示すし、挙句の果てに量子コンピューターまでもがグダグダと悩み始める。
主人公に、物語に引き込むだけの魅力が足りていない。これでは絵師に負けている。表紙のほうが、人物描写よりも可愛く見えるのだけど。設定は面白いのに、微妙なままで終わってしまったのが残念。ラスト付近で、一作目と絡んで来る部分は良かった。
途方もなく金がかかる量子コンピューターを造ったは良いものの、投下資金を回収する目処が立たず、困った事になる開発者の男。占い同好会に仮所属している、大学に入りたてな女の子。二人が出会い、ヒントを得た開発者は、仮想世界で神を作り、占いをしようとし始める。
量子コンピューターに神の代わりをさせようというアイディアは面白いのだが、開発者は暴走しすぎるし、主人公の女は悩んでばかりで煮え切らないし、開発陣にいる女性は神を創るという発想に対して過度に拒否反応を示すし、挙句の果てに量子コンピューターまでもがグダグダと悩み始める。
主人公に、物語に引き込むだけの魅力が足りていない。これでは絵師に負けている。表紙のほうが、人物描写よりも可愛く見えるのだけど。設定は面白いのに、微妙なままで終わってしまったのが残念。ラスト付近で、一作目と絡んで来る部分は良かった。
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Boy’s Surface
2009年10月1日 SF特集博士を愛せなかった数式。日本文学界の話題を独占したデビュー長篇『Self‐Reference ENGINE』から半年―芥川賞候補の注目作家がおくる数理的恋愛小説集。
ハヤカワSFシリーズから出ているけど、説明文は数理的恋愛小説集。見た目からしてピンクでSFっぽくないし、かと言って、これが恋愛小説として分類されるのも……。人類じゃなくて、知性を得たフォン・ノイマン型マシーンが読めば楽しめそうな恋愛小説ではあるのかもしれないけど(笑)。
SF風味なのだけど、ひたすら最近の純文学みたいな意味不明系統の話。どれもこれも、何が何だか訳が分からない。四編全てがなんじゃこれ!? 通常のSFからも、恋愛小説からも、逸脱し過ぎているので、ついて行けなかった。
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時は、21世紀の初頭。マンフレッド・マックスは、行く先々で見知らぬ誰かにオリジナルなアイデアを無償で提供し、富を授けていく恵与経済の実践者。彼のヘッドアップ・ディスプレイの片隅では、複数の接続チャネルが常時、情報洪水を投げかけている。ある日、マンフレッドは立ち寄ったアムステルダムで、予期せぬ接触を受けた。元KGBのAIが亡命の支援を要請しているが、どうやらその正体は学名パヌリルス・インテルルプトゥス―ロブスターのアップロードらしい。人類圏が特異点を迎える前に隔絶された避難所へと泳ぎ去りたいというのだが…。この突飛な申し出に、マンフレッドの拡張大脳皮質が導き出した答えは…“特異点”を迎えた有り得べき21世紀を舞台に、人類の加速していく進化を、マックス家三代にわたる一大年代記として描いた新世代のサイバーパンク。2006年度ローカス賞SF長篇部門受賞作。
天才なのに、すでに貨幣経済の枠組みから逸脱しており、アイデアを無償で他人にあげてしまう恵与経済の実践者、マンフレッド・マックス。彼の元に押しかけ、無理やり結婚してしまうパメラは、旧態依然とした資本主義経済に組み込まれた徴税官であり、本来マンフレッドが利益を出していた筈の金額を算出し、納税を迫る。
結局、二人が上手く行く筈もなく、破局を迎えるのだが、パメラはマンフレッドが知らないうちに、勝手に娘を産んでしまっていた! そこから徐々に娘であるアンバーの物語へと移って行く。マンフレッドが主人公という訳でも無かったのか!
アンバーは厳格で古いしきたりに縛られた母から逃げ出すのだが、手引きしてくれた父の思惑をも超越し、地球圏外へと逃亡してしまう。逃亡には、父が飼っていたアイネコが関わるのだが、最初は日本製のロボペットに過ぎなかった存在が、次第にとんでもない何かに変貌して行く。
宇宙へ逃げたアンバーは、木星圏に到達し、そこで環(リング)帝国を築き、女帝として君臨する。さらには、太陽系に近くなった褐色矮星ヒュンダイ+4904/-56に地球外文明の痕跡を求めて、コーラ缶程の大きさしかない超小型宇宙船に自分達のコピーを入れ、加速して送り出す。
コピー達が新世界に到達したアンバー達は、異世界文明に囚われて困難な状況に陥るのだが、ネットワークの存在を明らかにしつつ、一計によって離脱し、太陽系へと帰還する。
ところが、木星圏ではリング帝国が破産して崩壊し、オリジナル体は消失していた! しかも、別の男と結婚して子供まで生まれているという(笑)。かくして、産んでいないはずの子供と、異様に若い母親が出会う。
近未来の話なのに、内惑星が解体され、マトリョーシカ構造のダイソン球世界が形成されているし、背景設定が大仕掛け。基本的にサイバーパンク系統なのだが、人類がアップロードしたりコピーしたりしすぎで、オリジナルとの区別がつかなくなって来る。主要な人物も、結構死んで再生しているし。アンバーなんて、自分が知らない間に……。
未訳だけど「glasshouse」というのが同じ世界設定で、人類が銀河へ広がった27世紀の話になる。人類テクノロジーでは無理だけど、近所に地球外文明が築いたネットワークがあるので、それを利用して広がる話なのかな。
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アイアン・サンライズ
2009年9月16日 SF特集ウェンズデイ、16歳、オールド・ニューファンドランド・フォーの住人。彼女は暗い廊下を必死で逃げていた、執拗に追う怖るべき魔犬をふりきり、避難船にたどり着くために。あんな死体や謎の書類なんて見つけなければよかったのに。時間はもうほとんどない。約4年前、鉄爆弾が太陽を超新星化させ、モスコウで暮らす2億人を焼きつくした。その恐怖の衝撃波面―鉄の夜明けが、まさに今ここに到達しようとしていたのだ。
題名だけでは分かり辛いのだが、これは「シンギュラリティ・スカイ」の続編なので、先に前作を押さえておくべきだろう。直接の続きではないにしても、前作より後の話で、物語の中核となる二人もそのまま出てくるので。
恒星破壊兵器が使用され、ひとつの世界が滅亡した後から物語は始まる。故郷を失い、鉄の夜明けと呼ばれる衝撃波から逃げるために避難する人々の中に、ウェンズデイと呼ばれる少女がいた。彼女は見えない友人に導かれ、ある極秘文書を隠すのだが、彼? が単なるイマジナリー・コンパニオンではない。彼? の名前がハーマンという部分で、これが万能知能に近いエシャトンに関係する存在である事が分かってしまう。
難民と化したウェンズデイだが、新たな移住先で命を狙われ、宇宙船で逃亡する羽目に。敵は全体主義のリマスタードと呼ばれる勢力。リマスタード自体は、エシャトンの力と比べて劣るのだが、モスコウが滅亡するのを未来予測出来なかった事で、エシャトンに匹敵する黒幕の存在を予感させる。
後半から前作のマーティンとレイチェルもウェンズデイに合流し、報復兵器の使用を中止するためにリマスタードと対峙する事になるのだが、状況はさらに二転三転し、思いもよらぬ真実へ。
最後、リマスタードが地球圏にまで浸透してくるところで終わるので、この後の展開が気になるところ。続編あるよね?
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シンギュラリティ・スカイ
2009年9月16日 SF特集「わたしたちを楽しませてくれますか?」ある朝、新共和国の辺境惑星ロヒャルツ・ワールドに降りそそいだ携帯電話から聞こえてきた不思議な声は、住民の語る「物語」と引き換えに、3つの願いをかなえはじめた…お金、自転車、家、核融合爆弾…それがどんな願いでも。かくて惑星社会は大混乱に。この事態を「侵略」と決めつけた新共和国皇帝は、ただちに攻撃艦隊の派遣を決定したが…。英国SF期待の新星が放つ衝撃作。
ロシア帝国風の新共和国辺境ロヒャルツ・ワールドに現れたフェスティバルという謎の勢力が虐げられている民衆の願いを叶えまくり始めた。フェスティバルに有用な情報を与えるなどして彼等を楽しませるのと引き換えに、3つの願いを叶えてくれるのだ。それは、旧態依然として抑圧された社会に暮らす人々にとっては、ほとんど魔法に近い程の効力で、貴族が住むような豪邸でも、若返りでも、反政府勢力ならば貴族と戦うための核融合爆弾さえ手に入れる事が出来るのである。
秩序を乱された新共和国は、これを侵略行為だと捉え宇宙艦隊を派兵するが、未来へ行き、そこから時間を侵略直後の時間まで遡行するという危険極まりない方法で対処しようと画策する。この世界には、エシャトンという超AIが存在し、過去を変更する等の因果律違反を試みる勢力は、ことごとく殲滅しているのである。エシャトンが動けば新共和国だけでなく、周辺数十光年の星系住民が超新星爆発の驚異に晒される事になる。
表向き、ある企業から派遣されて、軍艦のメンテナンスを行う技師という事になっている主人公は、出撃する旗艦に乗艦する羽目になり、戦いに巻き込まれて行く。トラブルに巻き込まれてしまう直前に、謎の美女と出会うのだが、彼女も地球から派遣され、新共和国とフェスティバル双方が因果律違反を犯さないための監視をするため、外交特権を付与され、大佐待遇で乗艦するのだった。
あまりにもテクノロジーのレベルが違いすぎるので、フェスティバルやエシャトンは異星人文明なのかと思ったら、後半で明かされる衝撃の事実。それにしても、やはりレベルが違うと戦争にすらなりませんな。
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マーブル・アーチの風
2009年9月1日 SF特集毎年恒例の大会(カンファレンス)に参加するため、20年ぶりにロンドンを訪れたトムとキャスの夫妻。ロンドン地下鉄道をこよなく愛するトムは、旧友との再会を楽しみに地下鉄で大会会場へと向かうが、駅の構内で突然の爆風に襲われる。爆弾テロか毒ガスかと瞬間的に思うが、風は一瞬にしてやんでしまう。どうやら周囲の誰もこの風を感じなかったらしい。ようやく到着した会場では、病気や離婚といった話題ばかりを友人たちが口にしているのを耳にする。そして、ホテルに帰るため、地下鉄に戻ったトムは、ふたたび暴力的な“風”に見舞われるのだった。20年前と明らかになにかが変わってしまったロンドンで、トムは“風”の謎を追って地下鉄を巡る…。やがて誰にでも訪れる人生のその時を、迫真の筆致で描いた表題作(ヒューゴー賞受賞)。ベヴァリーヒルズのセレブを相手に、いんちきチャネリングで荒稼ぎする女霊媒師に、ある人物の霊が憑依する。その人物とは、オカルト詐欺やニセ科学を批判しつづけた実在のジャーナリスト、H・L・メンケンその人だった…。サイキック商売を題材に描く傑作ユーモア中篇「インサイダー疑惑」(ヒューゴー賞受賞)。クリスマスが近づくなか、街では少しだけおかしなこと(みんなが動く歩道の片側をきちんと空けて立つ、帽子をかぶる人が急に増えた)が起こり始める…。侵略SFコメディ「ニュースレター」(ローカス賞受賞)。ユーモア、コメディからシリアス短篇まで、SF界を代表する小説の達人の傑作5篇を厳選。物語を読む愉しみにあふれた日本オリジナル作品集。
コニー・ウィリス初体験。本当は「犬は勘定に入れません」を読みかけたのだけど、ページ数が多すぎて、読み終える前に返却期限が来てしまった(汗)。シリーズ物なのに読む順番間違えたりして失敗する事があるので、なるべく出版順か執筆順で読む事にしているのだがこれは短編集なので大丈夫だろうと思って借りてきた。
五編入っているのだけど、面白いかと問われれば、微妙だなぁ。やはり、アメリカ人のユーモアはよく判らんよ。最初の「白亜紀後期にて」なんて、最後の解説を読むまでどこを楽しめば良いのか理解不能だったし。
宇宙人侵略物? っぽい「ニュースレター」は、人類がどんどん善良になって行くから、どちらが正しいのか判らなくなってくるし、本当に侵略されているのかどうかも曖昧な感じ。「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」は、クリスマス業者の駆け引きかと思いきや、オチはベタ甘系か。表題作の「マーブル・アーチの風」は、もう少し爽やかな風が吹いてくるのかと思ったら……。
ラストの「インサイダー疑惑」が一番楽しめたかも。詐欺じみたスピリチュアル商法で馬鹿から金を巻き上げるチャネラーの嘘を暴こうとする男の戦いなのだが、チャネラーに憑依しているのがどうやら本物らしく、困った事になる。
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