ほんとうのたからもの
2010年1月2日 絵本おこじょのハルは、今日も一生懸命小さいからだで大きな丘を登ります。丘の上でお昼寝するのがハルのおたのしみ。でも、この日はちょっと違っていました…。TVアニメ「君が望む永遠」の劇中に登場する絵本。
ヘタレ主人公が他の女と一緒にいて、待ち合わせ場所に遅れてしまった事が原因で、事故に遭い、意識不明のまま三年間も喪ってしまった悲劇のヒロイン涼宮遙。しかも、意識が無い間に、親友だった女に、男を寝取られているというダブルパンチ。
泣きながら諦め、せめて人間関係だけは保とうとするものの、男も親友も夜逃げするかのように町から消え失せ、さらに可哀想な事に。一体、彼女が何をしたんだ! という、ただでさえ酷い扱いなのに、メディアミックス戦略におけるアニメ、ノベライズ等がことごとく親友ハッピーエンドになっているため、親友が公式トゥルーエンドかのように思われてしまった超可哀想なヒロイン。
なんというか、ほとんど救いが無いよね。唯一、得たものは、絵本作家という仕事。という訳で、絵本作家としてデビューしたヒロインが出版した本、という設定のネタ本がこれ。
何で本名じゃなくて“むらかみはるか”になっているのかは、謎。ただのペンネームなのか、村上春樹に便乗しようとする出版社の悪どい戦略なのか、村上さんという人と結婚したのか……。
コメントをみる |

ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心
2009年5月13日 絵本ジャングルでは沢山の命が生まれ、生きるために食べ食べられ、全てが夢であるごとく皆死んでいく。傲慢でジャングル一の嫌われ者のワニは仲間・兄弟さえ食べて生きてきた。だが…。自己中心と他者尊重の境界を問う一冊。
梨木香歩の絵本は、何で考えさせる作品が多いのか。絵本にはなっているけど、内容が大人味だよなぁ。
自分の兄弟すら食ってきた、自己中心的なワニ。彼は自分がライオンの友達だと思っており、他の生き物を食って生きている。ある日、見つけたカメレオンを食おうとしたところ、カメレオンは同じ爬虫類で、仲間だから食うなと言われてしまう。
そんな事を言い出したら何も食えなくなるので、構わず食ってしまうのだが、腹の中からナカマ、ナカマと声が聞こえ続ける。堪らずワニは、ライオンに相談しに行くのだが……。
途中で挟まれる「ジャングルの憂鬱」と「草原の無関心」という、ただ一言だけしかないシーン。無力感と無関係が滲み出ていて、考えさせられる場面である。
なんというか、この世は残酷な修羅世界だよな。こんな不完全な世界を創ったやつが何処かにいるとしたら、物凄く性格が悪いに違いない。自分に似せて人間を作ったから、人間も邪悪で性格が悪いんですねわかります(笑)!
コメントをみる |

あなたがその恨みを手放さぬ限り…蒼白い月の光は、時間を超えたいくつもの魂の旅路を優しく照らし出す。幻灯のように浮かび上がる、静かな一夜の物語。とうきち自身気づかずにいた前世の無念は、律儀な蟹の群れと共に月夜に昇華される。幻想的絵本。
名主の馬鹿息子が、沢蟹を捕まえて脚をむしり取っているのを見て、蟹を奪って逃がした男。しかし、馬鹿親の名主に怒られ、「蟹を返せないなら牛を貰う」と、牛を奪われてしまう。
牛がいなくなっても、自分一人だけなら何とかなると思っていたら、いきなり押しかけ嫁が! しかし、横歩きしているので、すぐに蟹の恩返しだとバレてしまう。鶴と違って、相手が蟹だと、やはり微妙だよなぁ(笑)。
蟹の大軍団は、牛を取り返そうと名主の家に押し寄せるのだが、ここで前世の因縁が明らかとなる。恨みを晴らして一件落着とならない手堅い結末なのが、ちょっと好みに合わなかった。まんが日本昔話に時々混ざっている、暗い物語みたいだった。
コメントをみる |

春のマジョモリは花が満開。ある朝つばきは、森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ。そこで出会ったハナさんとノギクやサクラのお茶でティーパーティー。後からもう一人来た女の子は誰? 「小さな女の子の時間」を描く。
入ってはいけないマジョモリへ招待されてしまった少女つばき。ちょっとホラーなのかと思いきや、行った先で待っていたのは、森の精霊みたいな緑の髪をしたハナさんという女の人だった。そこでお菓子を勧められるのだが、それはお供え物の美味しくないやつだった。
生クリームは食べた事が無いとハナさんが言うので、つばきは急いで家に戻り、母親に生クリームを頼む。招待されていない母親が悲しんでいると、自分にも招待状が届いて……。
招待されたのに、母親が全然出てこないと思ったら、そういう事かっ!! 最後のほうでネタバレする前に分かったけど、思わずもう一度読み返してしまった。ところで、ハナさんは森の精霊とかではなくて、木花咲耶姫だったのか。
コメントをみる |

ISBN:4916016564 単行本 光吉 夏弥 瑞雲舎 2005/09/10 ¥1,050
ちびくろ・さんぼに、ふたりの弟が生まれました。ちびくろ・さんぼは、弟たちがかわいくてよく面倒を見ていましたが、悪いさるたちがふたりをさらってしまい…。岩波書店版の後半部分を復刊。
ちびくろさんぼの続編を読んだ。さんぼに弟が出来ていた。ちびくろうーふとちびくろむーふである。書いてないけど、同じ大きさだからきっと双子。この二人が悪い猿に攫われてしまうのだ。弟を取り戻そうと、さんぼは頑張るのだが……。
それにしても、何で猿はいつも悪者なんでしょう? やはり、知性が備われば悪くなるのかね!? 頭が良くなりすぎて65億以上に増殖した猿なんて、大量虐殺してみたり、北極の氷溶かしたり、オゾン層に穴を開けたり、最近では宇宙にまでゴミを撒き散らしたり、悪さばかりしてますからね。もし神が実在するならば、きっと最凶に邪悪な存在に違いない。
とりあえず、復刊した瑞雲舎の勇気に敬意を表したい。言論弾圧に屈した岩波はヘタレ認定。
ふしぎの国のアリス (POP WORLD)
2007年10月5日 絵本ISBN:4591092062 大型本 ぽっぷ ポプラ社 2006/04 ¥1,365
へんてこな白ウサギのあとをおいかけて、ふしぎの国にまよいこんだアリス。そこで見つけた、小さなびんのくすりをのむと、アリスの体はきゅーんと小さくなってしまったのです…。キュートでかわいい、新しいアリスの絵本。
絵本でありながら、絶対に子供よりも大人がたくさん買っているはずだ。チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)が創り上げた永遠の少女アリス、無論、その原型となったのは実在した人物アリス・プレザンス・リデルであるが、今となってはその面影はない。今や完全に、金髪の少女で青いエプロンドレスというのが定番となってしまったが、このイメージに固定したのはディズニーですか?
それにしても、これはヤバイ。中身は普通の「不思議の国のアリス」でしかないのだが、なんせ絵がコレだから……。検索かけたら「赤ずきん」と「おやゆびひめ」まで出てる。ポプラ社の策略に嵌ってしまいそうだ。