いつかパラソルの下で
2006年3月1日 芥川賞・直木賞ISBN:4048735896 単行本 森 絵都 角川書店 2005/04/26 ¥1,470
待ちに待った、森絵都が描く大人の世界。
柏原野々は雑貨店で働く28歳の独身女性。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出した。そんな父も死に49日の法要を迎えようとしていた頃、生前父と関係があったという女性から連絡が入る……。
第133回直木賞候補作。
悪くは無いのだが、なんだか物足りない。多分、作者に毒気が無いからだろう。児童書でこういう柔らかい雰囲気は好きなのだが、題材が厳格だった父の死、死後に発覚した不倫、兄と自分は父の支配から逃れるために家を出て、今までの反動で浮ついた人生を送っている、妹は良い子を演じ続け、母は父の秘密を知りおかしくなる……と重い内容だけに、宣伝に書かれている通りの「ハートウォーミングストーリー」だと、なんだか違和感があるのだ。まぁ、それがこの作者の持ち味だし、文章も悪くはないのだが。
すごくドロドロとした内容になりそうな素材で、ここまで明るく書けるのは素晴らしいと思う。宣伝に偽り無く本当に「ハートウォーミングストーリー」ですな。
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