ISBN:4408534846 単行本 伊坂 幸太郎 実業之日本社 2005/12/10 ¥1,600
「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。
第135回直木賞候補作。
最近の著書の中では、個人的にはかなり「当り」だと思う。表紙のデザインは微妙だけど。「魔王」と「終末のフール」は背景を大きくしすぎなのに、物語が小さく纏まっていてちょっとなぁ……。
これは、全くミステリーでも無いし、他の少し不思議な感じの物語でも無い。いや、地味に超能力者がいるから、ほんの少しだけ不思議かも……。只の青春小説なのだけど、良き仲間に恵まれて学生生活を送った人なら、なんだか懐かしい想いに浸れるのではないでしょうか? 春、夏、秋、冬と物語が進んでいくから、学生生活の一年間だけなのかと思ったら、大学一回生の春、二回生の夏、三回生の秋、四回生の冬となっており、最後には卒業を迎える事になる。
キャッチが「砂漠に雪を降らせてみせよう!」なんてあるから、出口王仁三郎が雨の降らない荒野に奇跡の雨を降らせたように、超常的な事を起こすのかと思ったら、全然違った。でも、「砂漠に雪を降らせてみせよう!」と言う西嶋が、アメリカの中東派兵を懸念して、何故か必死に麻雀で平和(ピンフ)の役を揃えようとするズレっぷりがいい。他にも、誰もが振り返るような美女の東堂、僅かながら超能力のある南、主人公「僕」となる北村、そして鳥井がいて、最後の鳥井以外は東南西北となっており、これが麻雀に対応している。鳥井は、鳥瞰図の話と、あとは雀牌の索子にある鳥に対応しているんだな……。うーん、なんだか麻雀やりたくなってきた。もう、役の作りかたも忘れているけど。
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