ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶
2006年5月7日 読書ISBN:4104594024 単行本 大崎 善生 新潮社 2005/06/21 ¥1,365
あの日、あそこで道は分かれていた。すれ違い、交わることはもうないのだろうか……離れても消えない、胸の痛みとときめき。切なく深く心を揺さぶる、彼女達の恋愛小説。
大崎善生って、ある程度歳を取らないと、その良さがわからない作者の1人だと思う。文体がオッサンっぽいし、読み手もそれなりに人生を積み重ねないと(例えそれが無駄な積み重ねであっても)共感出来ないような気がする。そういう訳で、大崎善生を読む人は、中身がオッサンだと思う。読み手が女性であっても、あえてオッサンと呼びたい。オバサンって感じでは無いんだよな。
内容的には目新しくも無い、そして物悲しい短編4つ。どの話もきれいで、手入れの行き届いた水槽を見ているような透明感があるのだけど、巷のレビューを見る限り、いまいち人気が無さそう。洗練されすぎなのが、その原因なのじゃなかろうか。読み手はもっと泥にまみれているから、そこに自己を投影させる事が出来ない。もっと「パイロット・フィッシュ」みたいな長編を書いて欲しい。
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