失はれる物語

2006年6月12日 読書
ISBN:4048735004 単行本 乙一 角川書店 2003/12 ¥1,575
大切な人とわかちあいたくなる、暖かい涙を誘うピュアストーリーズ。
きみの音楽が独房にいる私の唯一の窓、透きとおった水のような6篇の物語。ブロードバンド映画「手を握る泥棒の物語」原作、書き下ろし短篇「マリアの指」同時収録。

基本的に、角川スニーカー文庫に入っている作品がほとんどなので、書き下ろしの「マリアの指」を読むために入手するであろう本。何故、このようなハードカバーの普通っぽいスタイルになっているかというと、ラノベだというだけで読んでもらえない可能性が高くなってしまうからだ。「ジャンル問わず何でも読みます!」と豪語する人々も「でも、ラノベは例外だけどね」という但し書きがついてしまう事、多々あり。ラノベは一般人から小説として認めてもらえないのである。残念ながら……。

乙一もこの点を踏まえ、敗北宣言までして、同じ内容でありながらラノベではないと思わせるべく、ハードカバーでの出版となった訳である。なるほど、確かに乙一でも、普通の文庫は常時出払っているのに、角川スニーカーだけはいつも図書館に並んでいるしな……。

実際、普通の小説と比べて、ラノベは一段落ちるかもしれない。一般小説と比べて、明らかに酷すぎる作品が混じっているからね。これは、酷くても萌え絵で売れてしまうという状況が生み出した負の側面であろう。一般の小説だと、中身が酷いと売れないので、そもそも出版すらされないからね。

実は乙一も、かつてはラノベをよく読んでいたらしい。だが、あまりにも酷い作品が多いので、読むのを止めてしまったそうだ。普通の作家がそんな爆弾発言したら「お前の作品だって糞だろが!」と罵倒されてしまいそうだが、乙一なので許されるだろう。どう考えても、ラノベ作家どころか、普通の作家よりも上の水準を保っているのだから。

ともかく、ラノベだからと見下すと、石ころに混じっている宝石作品を見落としてしまう可能性があるので、非常に勿体無いのである。乙一もラノベ領域を遥かに凌駕しているが、彼以外でも、意外に読める作品は転がっているのである。絵師に騙されてしまうから、なかなか見つけるのは困難だけど。

そう思い頑張って読んではみるものの、石ころラノベに騙されて続ける毎日なのである。とりあえず、乙一の角川スニーカー三部作? は石ころじゃなくて数少ない宝石作品だから、読書家だけど、ラノベ・アンタッチャブルな人は読んであげて下さい。

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