ISBN:4829162929 文庫 田代 裕彦 富士見書房 2005/02 ¥630
姉さんより大切なモノなんて何一つなかった。ずっと一緒に。それ以上、何も望まなかった。けれど、姉さんはいなくなった。あの日、あの瞬間、始まったのだ。―すべてが。僕は、死んでいた。最期の瞬間は覚えていないが、気付いたそこにはいわゆる三途の河原、ってやつだ。「君のようなものに進むべき道を示唆する案内人だよ」目の前に現れた、死神のような案内人。まだやり残したことがあることがあると言う俺に、案内人は新たな身体を与える。霧崎いづみ、という女の身体を。新しい生活。新しい身体。霧崎いづみとして生活する俺に、ある日、転機が訪れた。クラスメイトの死。犯人は、世間を騒がす連続殺人犯“キリサキ”だと言う。―なぜだ。なぜ今“キリサキ”が現れる?そいつはこの世に存在するはずがない。なぜなら“キリサキ”は…。俺は“キリサキ”を追うが―。戦慄のサイキック・サスペンス。

一応、転生モノなんだけど、少しヒネリが入っている。そのヒントとなる部分は最初から鏤められているのだけれども、油断すると作者にしてやられる。「時間」が絡んでくる時点で、そうなるかとは予想していたけど、犯人までは解らなかったなぁ。(というか、普通の人には解らないだろう。)

主人公は男子高校生にして、「キリサキ」と呼ばれる謎の連続殺人鬼な訳ですが、気がつくと死んでいて、三途の川みたいな場所で、死神のような正体不明の存在に遭うのである。その姿が死んだ姉にソックリで……。そいつの助けで現世へ戻るが、自分の身体は誰かが中に入っていると言う理由で別の身体に入れられる。虐めを苦にして自殺した少女の中に入れられた「彼」は、自分の身体にいる何者かを追い出して元に戻ろうとする。

そんな最中、連続殺人鬼キリサキによる新たな被害者が出て、「彼」は驚く。自らがキリサキであり、自分は最新の被害者を殺害してはいないからだ。自らの身体にいる何者かが模倣犯なのか? 

主人公の名前は或る理由により、最後になるまで伏せられたままなのだが、殺害した被害者の顔を切り裂いている事から、巷で「キリサキ」と呼ばれていた。彼が転生して入れられた女子高生の名前も「霧崎(きりさき)いづみ」で、キリサキ繋がりなのである。この妙な符号が隠し味として効いて来る。

「時間」を使ってヒネリのある転生物に仕上がっているし、上手いと思う。ただ、葬式シーンの挿絵は良くないと思うぞ。表紙にあるようなフリフリのゴスロリっぽい服が描かれているのだが、葬式にこんな服は着て行かないだろう。挿絵だから、作者の責任ではないけれども。
 
 
このラノベは、男が女に転生してしまうけど、萌えな話ではない。むしろダーク……。
★★★★★

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