ISBN:4794927371 単行本 若島 正 晶文社 ¥2,625
白痴の少女の美しい手に魅入られた青年ランは、その手を我が物とするために少女の家に移り住むが…エロスとタナトスの極致ともいうべき異形の愛をえがいた絶品「ビアンカの手」、頭と左腕を残して砂に埋まった男の内的世界を追求して圧倒的な「海を失った男」、交通事故で妻を亡くした男が、墓地で出会った不思議な男に墓を“読む”術を習う「墓読み」の三大傑作に、本邦初紹介の力作中篇「成熟」「三の法則」「そして私のおそれはつのる」、さらに名短篇集『一角獣・多角獣』から「シジジイじゃない」「ミュージック」を収録。めくるめく思考のスリルと異様な感動に満ちた不滅のスタージョン・クラシックス。
難解な構成でSFという枠だけでは収まりきらない内容のものが多いためか、同時期にいた他のSF作家と比べて明らかに不遇だったスタージョン。没後に再評価の機運が高まっているのが物悲しい。まあ、そのお蔭で今から読み始める人には絶好の環境が整いつつあるのだが。近年、各社から過去作品が復刊されて入手しやすくなっている。
それにしても後味が悪い話が多い。手に魅せられて殺される手フェチとか、具現化した妄想がそれに気づかず人間として生きているつもりになっていたり、成熟を求めて死に至るスーパー人類とか、海が存在しない世界で放射能にまみれて死につつある男がいたり……。
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