ISBN:4022502444 単行本 阿部 和重 朝日新聞社 ¥1,575
ある老人が語りはじめた、一人の少女の運命――ハムラシオリという、歌を愛してやまなかった女の子をめぐる、痛いほど切なく、あまりにも無慈悲な新世代のピュア・ストーリー。なぜ彼女だけが、苛酷な人生を歩まなければならなかったのか? この未知なる感動の物語は、21世紀版「マッチ売りの少女」として広く語り継がれるだろう。芥川賞受賞後に初めて書かれた、極限の純真小説。全く新しい阿部和重!

阿部和重って、もっと純文学系の人かと思ったら、こんなのも書けるんだ。

最初は少年だった頃の回想シーンから始まる。何も無いけど、何故か人が集まる公園に仲間と通う少年達。そこは公園というよりも、何も無い広大な空き地であったが、なぜか多くの人が集う場所となっていた。そのうちに、紙芝居をしているおじいさんと知り合う。その紙芝居おじいさんが語り始めた、ある少女の話が本編となる。

内気な性格で利用されやすい、音痴で泣き虫な少女シオリが主人公。悪い男に騙され、上京して専門学校へ行けばクソ教師に虐げられ、挙句の果てには横領事件で学校閉鎖。知り合ったバンド連中にも金を巻き上げられ、実家は会社が倒産して破綻。挙句の果てにはバンド仲間の1人からスーツケース核爆弾を預けられてしまう。

警察に届けても相手にされず、捨てようとするのだが周囲の人に咎められ、スーツケースとともに暮らす日々が始まる。スーツケース核爆弾というのは、それを預けて海外へ消えた男の冗談だったと思うことにしていたある日、パキスタンで謎の大爆発が発生する。

スーツケースを持って東京タワーに登った後、スーツケースを謎の男に強奪されかける。直後、預けた男から国際電話がかかって来る。誤作動で同種の核爆弾がパキスタンで爆発した事を知らされ、電磁波の多い場所には持っていかないように注意されるが、まだ通話の途中で破裂音とともに会話が途切てしまう。半信半疑でシオリが誤作動を開始した際の判別方法を試していると、すでにカウントダウンが始まっていた!

人のいない郊外まで持ち出すには時間が足りない。メール友達に相談しながら、絶望的な戦いを開始するシオリ。最も被害が少なそうな地下鉄構内へ、そこから線路におりて闇の中を進んで行くのだが……。

冒頭の公園と紙芝居おじいさんは必要無いのではないかと思っていたら、最後の最後で繋がる。そして、その公園の意味が明らかとなるのだ。最初から最後まで、ひたすら可哀想な主人公。
 
 
なんでそこまで心が澄んでいるんだ? 俺なら迷わず、最も人気の多い場所まで運んで放置、或いは金を巻き上げたクソ女の部屋の前で放置し、飛行機か新幹線で逃げるだろうな。

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