栄光への飛翔―若き女船長カイの挑戦
2007年2月7日 SF特集ISBN:4150115281 文庫 斉藤 伯好 早川書房 ¥1,029
「きみは士官学校の恥だ」と校長。「1500時までに退学届けを提出したまえ」そんな、あたしはただ親切心から下級生の頼みを聞いただけなのに!お人好しな性格があだとなり、事件に巻きこまれて士官学校を退学になったカイ・ヴァッタは、傷心を抱えて故郷へと戻った。そんな娘に、航宙会社を経営する父はおんぼろ貨物船の船長を命じる―ベテランクルーにかこまれ、辺境星域に貨物を運ぶ簡単で安全な仕事のはずだったが。
小説というものは、最初の30ページで面白くなければ、後半で面白くなるという事は、ほぼ有り得ない。少なくとも、私はそういう小説にはまだ出会った事がない。にも関らず、最初の30ページ(厳密には最初から最後まで)が面白くない小説が多すぎる。面白くない小説を書いている駄目な作家は、このエリザベス・ムーンを見習うべきである。
これ、すごく面白い!!
久々のホームラン級小説に当たった。
スロッター・キーの宇宙軍士官学校最優秀で、卒業間近だったカイラーラ・ヴァッタは、ほんの些細な間違いから大事になり、退学処分となる。落ち込む彼女を見た父親は、自社所有貨物船の船長として、宇宙に送り出す。安全な航路を回り、最終目的地で、その老朽化した宇宙貨物船を売却して戻ってくる事。それが与えられた任務のはずだった。
何事も無く終わる予定だった航海は、次から次へと問題が発生し、思いもよらぬ方向へと進んで行く。トラブルだらけの旅となるのだが、詳細を書くと面白くなくなるので、読んでみてのお楽しみという事で。とにかく、最初の30ページどころか、一行目から面白い! 次から次へとトラブルが発生するジェットコースター小説で、面白くないページが無いという神仕様。
「シーフォート」「ハリントン」「ヴォルコシガン」あたりが好きな人なら、絶対に気に入るだろう。というか、「ハリントン」と「ヴォルコシガン」は図書館に無いから読んでないけど……。
という訳で、エリザベス・ムーン。アン・マキャフリイと合作したりして、かなり売れているみたいだが、不幸な事に日本で翻訳され始めたのはつい最近の話。結構、著作が溜まっているので、初期作品から全部出して欲しいところである。早川書房、頑張れっ!
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