ISBN:4101021120 文庫 ねじめ 正一 新潮社 ¥420
高円寺駅北口「純情商店街」。魚屋や呉服屋、金物店などが軒を並べる賑やかな通りである。正一少年は商店街の中でも「削りがつをと言えば江州屋」と評判をとる乾物屋の一人息子だった―。感受性豊かな一人の少年の瞳に映った父や母、商店街に暮らす人々のあり様を丹念に描き「かつてあったかもしれない東京」の佇まいを浮かび上がらせたハートウォーミングな物語。直木賞受賞作。
第101回直木賞受賞作。
商店街で乾物屋を営む家に生まれた正一少年を主人公とした、古き良き下町を舞台とした物語。昭和の懐かしい匂いが漂う良作です。短編の集合体ではあるけれども、一貫して正一少年視点で捉えた、商店街の人間模様が描かれる。こういう、のどかな時代が少し羨ましい。人は、効率化と利便性を追及する過程で、何か大事なモノを無くしてしまった。各地にあった商店街は大店舗に駆逐されてしまったから、なおさら郷愁を感じるのだろうか。
引き出物を納入していた結婚式場を競合他社に取られそうになる江州屋乾物店。働いていた身内がだらしない女に篭絡され、猛反対する親父。隣に仮店舗を構えた、羽振りの良い化粧品屋に反発しながらも、上手く言いくるめられて家族全員で物を買ってしまう江州屋の大人たち。最後の、火事が出る話が良かった。消防車が来るまでに、必死で消化しようと頑張る人々。なんで消防車が間に合わなかった事を喜ぶのかと思ったら……。
デビュー小説にして、直木賞受賞作というのがすごいな。
主人公の少年が正一なんだけど、これは自分の話でしょうか?
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