エンドレス・ワールド
2007年2月21日 読書ISBN:4418065237 単行本 佐伯 紅緒 世界文化社 2006/09 ¥1,680
ビジネスエリートの計略が渦巻く世界。ふとしたきっかけで会社の機密データを手にした平凡な派遣OLが、探偵ごっこが招いた怒涛の経験を通じ、最強の女に成長する。恋に、仕事に、友情に果敢に立ち向かう女性を描く本格長編小説。
初めての著書にしては、かなり完成度が高いと思う。作中の小道具も上手く使っているし、タロットになぞらえた目次も良い。小道具と言えば、「ゲド戦記」が出てきた! 活字中毒の人ならわかると思うけど、読みまくっていると、まるで何かに吸い寄せられるように、あるキーワードで繋がるような本が集まってくる瞬間があるのだ。今回は、ゲドに反応しているらしい。
ごく普通の派遣社員にすぎなかった女性が、ある機密資料を入手してしまった事から始まる攻防戦。会社ぐるみの大掛かりな不正と、それに立ち向かう派遣三人組。派遣という中途半端な立場であるが故に、飼いならされた社畜とは違い、大胆かつ迅速に行動していくのが心地良い。ちょっと上手く行きすぎだけど、やはり悪党が滅びるのを見ると気分が良い。悪党って、モデルになった駄目社員がどこかにいるらしいね(笑)。
女流作家が描くビジネス世界は、女性ゆえの甘えみたいな部分が作中に現れがちで、男が読むと不満な点もちらほらと伺えるのだが、この作者には女性視点による甘えは無く、きっちりと描ききっているのも好感が持てる。
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