ISBN:4309017665 単行本 伊藤 たかみ 河出書房新社 2006/07/17 ¥1,470
「お姉ちゃん、これ浴びたら不死身になることにしよっか?」馬鹿の家に生まれたおれと姉の、かすけた血の物語。新・芥川賞作家の最高傑作!芥川賞候補作「無花果カレーライス」他収録。
第133回芥川賞候補作「無花果カレーライス」収録。
帯に「芥川賞作家の最高傑作」なんて書かれていますが、この程度で最高などと言われてしまっては、もう先が無いのではなかろうかと心配になってくる。文章自体は高水準だし、悪くはないのだけど、売りたいからと安易に「最高傑作」なんて言い切ってもいいのだろうか?
表題作の「ドライブイン蒲生」が一番良かった。駄目な父親の元で育った姉と弟は、大人になってからも何となく胡散臭い。親は無くても子は育つが、やはり成長するまでの環境って大切だと思うんだよな。子は親を選べないし、例えどうしようもない人であっても、その遺伝子を受け継いでいるという時点で、完全に他者となる事は出来ないのである(残念な事に)。
芥川賞候補となった「無花果カレーライス」は、さらに人間関係が壊れた物語だった。ヒステリーで暴力的な母親と、虐待されているのか逆に母を追い詰めているのかわからない少年の歪んだ関係。最後には母親のほうが壊れてしまうのだが。
最後は「ジャトーミン」という意味不明な題がついた話。何かと思ったら、ジャトーミンは父親の事だった。父親が学生の頃から使っている蛇冬眠という俳号なのだ。この父親も、あまり出来た人ではなくて、子供を連れたまま愛人に会ったりする。
全部に、ロクデナシな親が出てくるし、子供もカエルの子は……と言った感じなのだが、登場人物がどれも人間臭くて憎めないのである。
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