ISBN:4163254005 単行本 伊藤 たかみ 文藝春秋 2006/08/26 ¥1,050
暑い夏の一日。僕は30歳の誕生日を目前に離婚しようとしていた。愛していながらなぜずれてしまったのか。現代の若者の生活を覆う社会のひずみに目を向けながら、その生態を明るく軽やかに描く芥川賞受賞作!他一篇収録。

第135回芥川賞受賞作。

選考委員の評価は芳しくないようだが、「ハリガネムシ」や「介護入門」という地雷を踏んだ後では、ごく普通なだけで許せるよ。うん、俺の心は、あの地雷で許容範囲が広くなったさ。

付き合っていた彼女とズルズル続いて結婚してしまったはいいが、お互い夢に潰されていく過程で、現実も崩壊して離婚に至る。愛だ恋だと浮かれてみても、所詮は生活基盤がしっかりしていないと世迷言にすぎませんから。夫婦関係が壊れてしまうのが痛々しいが、リアルタイムではなくて、物語においてはすでに離婚寸前の状態となっている。自販機に飲料を補充するバイトで糊口をしのぐ主人公男、一緒にルートを回る女性もバツイチで、二人の会話が漫才っぽいから、深刻な状況も読み進めて重苦しくならない。

もしも金に困らない生活基盤があれば、きっとこの二人は離婚に至らなかっただろうと思うとやるせなくなる。ヘタレ男は結婚してはいけない。

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