アンクレット・タワー
2007年6月24日 読書ISBN:459109474X 単行本 真田 コジマ ポプラ社 2006/10 ¥1,260
イケメン彼氏に振り回されるショップ店員、5年前に別れた彼女との再会に戸惑うサラリーマン、愛する夫に浮気をさせようと仕組んでしまうイラストレーター。それぞれのカップルが相手との関係を見つめなおしていく2日間を描くアンサンブルストーリー。何の接点もない3組の男女が、孤独を抱えた一人の少女の行動に心動かされ、自らの関係に答えを見出していく…。第1回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。
第1回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。つまり「削除ボーイズ0326」に負けたという事になる。最も多くの選考委員が評価した作品とかチャッチついているのに大賞が取れなかった敗因は、やはり大人向け作品を書いてしまったという点につきるだろう。別に、これよりも削除ボーイズが優れていたとは露ほども思わない。要は、ポプラ社が求める作品が大人も読める子供小説だったのに、大人小説を書いてしまったから勝てなかったのだ。
題名にあるアンクレット・タワーは、アンクレットを買ってもらえなかったから塔に登って死のうとする少女から来ているのだが、塔も少女も主役ではない。少女も登場人物の一人にすぎず、少女が登る塔の様子をテレビで観るショップ店員とイケメン彼氏、彼女と別れたサラリーマン、その元彼女、夫に浮気を促すイラストレーター等、三組の男女とその他の人間で構成される。ちょっと登場人物が多すぎて纏まりが無いのが難点。それぞれに接点はなく、アンクレット・タワーを中継してしか繋がってはいない。これが、どこかで全てが繋がっていたら神作品だったかもしれない。
「大人も読める児童文学」という縛りが無ければ、私も文句無くこれを推す。まだ不足している部分はあるけれども、文藝賞よりは遥かに出来が良い。せめて、文藝賞でもこのレベルが出てくるようになれば良いのだが。
糞人間がたくさん出てくるので、今まで散々な目に遭わされてきた私としては、ちょっと辟易する部分もあった。中身スカスカのイケメンと、それをアクセサリーみたいにする馬鹿女と、そのイケメンを寝取ろうとする糞女と、アンクレット少女の蛆虫みたいな父親と、蠅みたいな祖母と、便所虫みたいな母親と、ゴキブリ級のサラリーマン上司……。最後には多少なりとも救いがあるから我慢出来るけど、もっと気分爽快になれる作品のほうが好きだな。
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