ISBN:4048737414 単行本 恒川 光太郎 角川書店 2006/11 ¥1,575
現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?透明感あふれる筆致と、読者の魂をつかむ圧倒的な描写力。『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎、待望の受賞第一作。
前作よりも、さらに力強くて魅力的。「夜市」も悪くは無いけど、短いから物足りなかった。今回は、かくれ里のように怪しげな「穏」と呼ばれる場所が舞台。下界と呼ばれる現世からは隔絶された場所で、そこには雷の季節が存在するのだ。そして、雷の季節には鬼にさらわれて人が消える。少年の姉も雷の季節に消息を絶ち、同時に風わいわいという憑き物に囚われる。何かが自分に憑依している事を隠して生活する少年は、穏の外れにある墓町へ出入りするようになり、闇番と共に、行方不明となった少女の亡霊に出会ってしまう。連続殺人事件に巻き込まれた少年は、鬼衆に処刑される前に逃亡するのだが……。
後半は別パート。下界で邪悪な継母に殺されそうになった少女は、より邪悪な男の手にかかり、自分達が暮らす世界から隔絶された場所にさらわれて殺される寸前、風霊鳥の助けで逃げ延びる。
前半と後半で一見バラバラの物語が、最後で見事に融合する。時系列も異なるのだが、上手くラストまで繋がっていく。二作目にして、ここまでの技を出してくるのは素晴らしい。
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