ISBN:4257770104 文庫 梶尾 真治 朝日ソノラマ 2003/06 ¥630
もしも過去に跳べることができたら、今は亡き、愛する人を救いにいける。すでに滅びた物を目の当たりにできる。それだけでなく、過去の世界で、新たな恋に落ちるかもしれない。ついに「クロノス・ジョウンター」という機械が開発され、誰もが夢見るそれが現実となったとき、そこにさまざまな物語が生まれた。さあ、「時」と「おもいで」の一流シェフの腕前をじっくりとご堪能を。

「この胸いっぱいの愛を」の元ネタがこれなのは知らなかった。恋人を失った男が過去改変に挑むタイムトラベル物。しかし、登場するのはタイムマシンではなくてクロノス・ジョウンターという機械。過去へ行けるという基本原則は踏まえつつも、ウェルズが創り上げたタイムマシンとは違い、欠陥が多いのである。

第一の欠点は、過去へ行ってもその時間へ留まり続ける事は出来ずに、極めて短時間で跳ね飛ばされてしまうのだ。未来からの侵入物が異物と看做されて過去から弾かれるのか、未来から引っ張られるのかは明らかでないが、苦労して過去へ到達しても、その直後に未来へと行ってしまうのだ。第二の欠点は、一度到達した過去以前には、二度と赴く事が出来なくなるという点。過去へは一度しか行けないのである。第三に、これが最大の欠点なのだが、過去から跳ね飛ばされて向かう先は現在では無く、出発前よりも未来へと到達してしまうという点。さらに、重ねて過去へ向かうと(最初に到達した過去よりも少しだけ未来に該当する過去へは到達出来る。)未来へと跳ね飛ばされる時間が増大していくのだ。

最初のタイムトラベルで恋人の事故死(1995年に発生)を改変する事に失敗した男は、一年八ヶ月後の未来へと飛ばされる。二度目の改変を試みるがまたもや失敗、七年後の世界へと飛ばされる。欠陥の多さから倉庫入りしたクロノス・ジョウンターを探し当て、三度目の遡行を試みるも失敗して2051年へ。すでにクロノス・ジョウンターは博物館の展示品と化している。一度遡行した過去以前には戻れないという制約から、事故までの残り時間を考えると残されたチャンスはあと1回。しかも、過去改変に成功したとしても、その後に飛ばされる先は西暦5187年。つまり、恋人が存在しなくなってから3000年以上も後の未来世界なのである。

語られない過去にハッピーエンドは待っているのだろうか。画像は増補版だけど、図書館にあったのが初期バージョンだから、二つ目の話までしか収録されてないんだよなぁ……。残りの二話が気になります。

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