ISBN:4101250227 文庫 伊坂 幸太郎 新潮社 2005/04 ¥660
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
この物語は構成が凄い! 一見バラバラに進行する5つの話が最後に繋がる。時系列が上手くズラされているから、作者の意図が読んでいる途中では見えにくいのだ。上手く隠されている。なんとなく繋がっているのは判るけど、過去と現在が意図的にズラされているのが素晴らしい。登場人物が他作品ともリンクしているので、やはり執筆順に読み進めるのが良いだろう。ちょっと失敗した……。
殺人事件は起こるのだけど、謎解きは無い。オカルト的な要素が濃すぎで、これはミステリーの範疇には入るのだろうけど、推理物では無い。死体がバラバラになって、またくっ付くという都市伝説風なオカルトには答えが用意されていたものの、教祖みたいになっている男の超常能力については明かされないままで終わる。
核となる登場人物がここまで多いのに、最後に収束していく力量は見事っ! 下手な作家なら、視点がボヤけすぎで纏りない駄作で終わっただろう。
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