大真面目に休む国ドイツ(平凡社新書090)
2007年7月30日 読書ISBN:4582850901 新書 福田 直子 平凡社 2001/05 ¥714
風変わりな表題である。休んだドイツ人は何をしているのかといえば、長期の休暇(ウアラウプ)は旅行である。ヨーロッパを陸路旅すると、あちこちでドイツ人を満載した観光バスに遭遇する。アフリカ、南米でも最初に目につくのはドイツ人旅行客。彼らは大まじめで群れ、今でも「民族大移動」中なのである。彼らが目指すカッコいい旅先はいまや南極、近未来は宇宙だ。なぜドイツ人はそんなに休めるのか? その鍵は「労働時間法」である。部下が休まなければ、上司が処罰の対象になる。部下は当たり前に休み、上司も休む。自分たち(の代表)が決めた法律を遵守しないことに何の価値もない。サービス残業という倫理観は、彼らにとっては非倫理的なのである。
東西格差や移民問題を抱える今となっては、そう手放しで喜べるような状況でも無いような気もするのだが、諸事情を差し置いてもやはり、ドイツ人が日本人とは比べようも無いほど豊かな人生を謳歌出来る民族である事は確かなようである。
労働法が徹底され、遵守しないと上司は無能の烙印を押されるどころか、処罰の対象にまでなる。一度労働した後のインターバルまで緻密に設定されている優等国においては、どこかの島国のような強制サービス残業など愚の骨頂に相違あるまい。極めつけは、二ヶ月にも及ぶ長期バカンス。日本では一億年先になっても有り得ないだろう。いっそ、ドイツに占領されてしまえばいいのにと思ってしまう。それにしても、日本人と比べたらあまりにも働いていないのにあの国力と生活水準、やはりドイツ人は世界一ですな。
日本は二ヶ月の夏休みどころか、年間休日ほぼ皆無、年間労働時間6000時間超過という企業がゴロゴロ存在するような、労働後進国ですからね。欧州の倍も三倍も強制労働させて国際競争力をつけている行為は、労働力のダンピング以外の何物でも無いのだから、ILOが圧力かけるか、欧州諸国が不買運動でも展開してくれたらいいのだが。
まあILOについては、常任理事国として拠出金で口を塞ぐ見返りに、国内では好き放題するのを黙認させているような気もするが。未批准条約もたくさんあるし、ILO勧告も遵守しないからね。やはり日本は、ドイツ軍に占領されて属領となったほうが……。
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