ISBN:4087748502 単行本 荻原 浩 集英社 2007/03 ¥1,680
木はすべてを見ていた。ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。千年という長い時間を生き続ける一本の巨樹の生と、その脇で繰り返される人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する。
千年の時を生きる大樹を軸に、二つの時間が交差する短編の連なり。短編同士も微妙に繋がっている。枠組みとしては面白いけど、救いの無い話ばかりが続いて憂鬱な気分になる。
謀反により山中へ逃れたものの、妻も自らも息子も命を落とす国司。太平洋戦争で落命する少年。大樹の枝で首を吊ろうとする少年。幹の側に穴を掘り、人を埋めようとする極道。千年樹の周りで繰り広げられる陰惨な人間模様で、樹が禍々しい物に思えてくる。全ては、虫けらの如く惨めに死に逝く人間が、愚かな生き物であるが故の出来事なのだが。
この作者は、人間の愚かさ加減を書くのが得意ですな。読んで人間が嫌いになる話が多い。読み終わってもハリウッド映画みたいな爽快感は微塵も感じられない。
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