ISBN:4062139596 単行本 中村 文則 講談社 2007/06/12 ¥1,575
浮浪者たちに輪姦されている精神薄弱の女・やっちりを目撃した私と友人・冴木。夜の工場跡地で体験した、暴力の光景。後日、やっちりは死体となって発見される。少年時代に体験したひとつの死。二人の生き方は、成長するにつれだんだんと社会から逸れていってしまう。ある日、大人になった私のもとに冴木から電話がかかり、二人は再会する。数日後、私が自宅に帰宅すると自分の部屋の中で、ひとりの女が死んでいた。それは、よく指名するデリヘルのエリコだった……。心の闇、欲望、暴力とセックス、そして人間とは何か。暴力と人間をテーマに描く芥川賞作家が全精力を傾け、ミステリアスな物語とスピード感あふれる文章で描き出した傑作長篇小説。
ある日、私のベッドの上で、女が死んでいた
帯に書かれた強烈なキャッチ。
ミステリーとしてはありがち設定だが、これは推理物ではない。当初は自分が疑われるものの、警察の調べにより、すぐに犯人が主人公の友人だと発覚する。彼は連続強姦魔として手配されていた!
幼少の頃、二人で家出しようとした夜、廃工場に住み着く浮浪者達が集団で女の浮浪者を襲っている現場を見てしまう。それが原因で狂っていく二人の人生。この強烈な体験故に、親友だった男の性癖に異常をきたして犯行に及んでしまった。そういう物語なのかと思いきや、遺書代わりにメールが届く。そこには、どんどん追い込まれていく男の悲痛な叫びが……。結局、真実が語られぬままに男は自決してしまう。本当に彼が犯人だったのか判らないままになってしまった主人公は、真犯人かもしれない女と……。
これも力作だが、重くて暗い。読了後、安易に悪を描いたノワール小説みたいな胃のむかつきは覚えないけれども、この手の物語は精神的に疲れる。
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