明日の記憶

2007年10月13日 読書
ISBN:4334924468 単行本 荻原 浩 光文社 2004/10/20 ¥1,575
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩――告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。上質のユーモア感覚を持つ著者が、シリアスなテーマに挑んだ最高傑作。

若年性アルツハイマーに襲われた主人公の悲劇。最初は単なる物忘れかと思ったが、病院で受けた検査の結果、若年性アルツハイマーである事を知らされる。突如として失われてしまった未来、急速に壊れていく自分自身を必死で繋ぎ止めるための絶望的な戦いが始まる。

膨れあがるポケットのメモ、取引先とのアポは忘れてしまうし、行き先が判らなくなり路頭に迷う。やがて部下の裏切りで会社に知られてしまい、使い捨てのごとく閑職へと追いやられてしまう。もっとも、恨むべき裏切り者の顔すら思い出せなくなるという悲劇が待ち構えているのだが。心無い仕打ちである。会社に尽くした結果がこれでは浮かばれまい。会社というものはかくも理不尽で冷たいものであるが、閑職にまわされるだけマシと言えるかもしれない。優良企業でなければ、速攻でクビになるだろうしなぁ。今時は、人間を使い捨てにする会社だらけですから。

この病気が単なる痴呆と異なるのは、ほぼ確実に死に至る病であるという点。海外では回復例も見られるものの、日本においては病の進行を遅らせる薬しか認可されていないという現状。すでに欧米で臨床段階へ入った新薬を、非加熱製剤に懲りてなますを吹きまくる厚生労働省が認可する日は来るのだろうか……。

このドラッグラグ問題、今TVでもやっていた。米国でかかる認可期間は一年半、日本では四年。これが待てない患者も多い。アメリカではすでに治療が始まっているのに、日本では認可されていないがために、無念な思いで死んでいく患者がたくさんいるのだ。いや、無念という言葉では済まされないだろう。アメリカ人として産まれていたら助かったかもしれないのに、日本に産まれてしまったがために死ぬのだ。言い換えよう。日本という国家の不作為(人手が足りないから認可に時間がかかりますという言い訳)によって殺されるのだ。

ドラッグラグ問題は、疲弊国家日本に存在する数え切れない程ある不具合のごく一部でしかないかもしれない。しかし、たったひとつであっても改革出来るならば、意義の大きい一歩である。舛添大臣が現状を打破する事が出来るか否か!? これで舛添大臣がやり遂げたなら、彼以外の歴代厚生労働大臣は全員が無能フラグ成立という事で(笑)。

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