ISBN:4150115338 文庫 中原 尚哉 早川書房 2005/10 ¥1,470
その内部には「啓示空間」があり、驚異の科学技術が隠されているといわれる謎の空間シュラウドからただ一人生還したダン・シルベステは、リサーガム星で異星種族の遺跡を発掘中、その滅亡の原因を解く鍵として、中性子星ハデスを差し示す手がかりを得るが…99万年前の異星種族絶滅の謎、巨大ラム・シップ内の暗闘、中性子星に隠された秘密などを背景に、人類の存亡をかけた戦いをグランドスケールで描く迫真の宇宙SF。
無茶苦茶長い! 嫌がらせかと思うような分厚さである。文庫なのに、全部で1039ページ。値段も税込み1,470円と高額。どうして上下二冊に分けなかったのか謎である。読む時も重くて腕が疲れるし、こんなに太かったら背表紙が痛むだろうに……。
99万年前に滅亡した異星人アマランティン族の遺跡を発掘調査する考古学者、その考古学者を狙う暗殺者、融合疫に汚染された船長を救うために考古学者を探す近光速船。このバラバラの物語が出揃い、一箇所に纏るのは500ページを超えてから。並の小説ならもう終わっている頃にようやく中盤戦なのである。
全てのカードが出揃った後は、近光速船で中性子星であるハデス星系に存在する謎の惑星ケルベロスへ。近光速船内部の描写がまた気持ち悪くて、映画「エイリアン」みたいな雰囲気。終盤(とは言っても終盤だけで200ページくらいあるのだが)にむけて明らかにされる銀河の歴史。銀河系に生命体が存在していない理由が明らかにされて行く。
かつては生命が満ち溢れていたのだ! それが、周辺にある二つの銀河(恐らくは大マゼランと小マゼランだと思われる)まで巻き込んだ黎明期戦争と呼ばれる大戦争により数百万もの知的種族が巻き込まれて荒廃してしまったらしい。そして、戦後現れたインヒビターと呼ばれる存在によって、二度と銀河大戦を起こさないために、新たに勃興した星間文明はことごとく滅ぼされていたのだ。考古学者が調査するアマランティン族もその餌食となっていた。知らぬうちに人類存亡のキーパーソンとなってしまった考古学者だが、気づいた時にはすでに……。
コメント