いっぺんさん

2007年10月30日 読書
ISBN:4408535060 単行本 朱川 湊人 実業之日本社 2007/08/17 ¥1,680
いっぺんしか願いを叶えない神様を探しに友人と山に向った少年は神様を見つけることができるのか、そして、その後友人に起きた悲しい出来事に対してとった少年の行動とは……。感動の作品「いっぺんさん」はじめ、鳥のおみくじの手伝いをする少年と鳥使いの老人、ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」など、ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド八編。

不思議な話、ちょっと気味悪い話が盛り沢山の短編集。少し不条理系の話も入っているのだが、この系統の物語を書く他の作者と違って、後味が悪くて嫌な感じが残る事は少ない。舞台設定を過去に遡る事で、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しているからだろうか。不幸な結末を迎えてしまう話でも、ノワール小説やホラー小説を書いている作家の作品みたいな胃のむかつきは残らない。

冒頭にある表題作「いっぺんさん」と、一番最後にある「八十八姫」が秀逸。しかし、古き良き時代とまでは行かなくても、まだ多少なりとものんびりとした感じが残っていた昭和という時代を知る世代じゃないと、これは楽しめないのではないかと危惧してしまう。今や、ネットの中だけでなく現実世界までドッグイヤー状態で、時間にも心にも、少しも余裕が無い平成の世の中。果たして、こんな殺伐とした時代に生まれ育った平成生まれでも、昭和世代と同様にこれを「読んで」いるのだろうか?

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