1973年のピンボール
2007年11月17日 芥川賞・直木賞ISBN:4062749114 文庫 村上 春樹 講談社 2004/11 ¥420
さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との“僕”の日々。女の温もりに沈む“鼠”の渇き。やがて来る一つの季節の終り―デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く三部作のうち、大いなる予感に満ちた第二弾。
第83回芥川賞候補作。
<僕>三部作の二作目。ここまでは、サラサラと流れるような文章で書かれる、倦怠感漂う普通の青春小説。これを読んだ時点では、まさか完結編であんな結末が用意されているとは夢にも思わないだろう。(このシリーズが展開されていた当初は三部作で、これにダンス・ダンス・ダンスも加わっているらしいが未読。)
恩田陸ほどではないけれども、村上ワールドも少しずつ他の作品と関係している。直子という女性が出てくるが、これは「ノルウェイの森」と同一人物なのか、或いはその原型か? 「ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲め」という台詞は、ほぼ同内容で「アフターダーク」でも出てくる。
「風の歌を聴け」と「羊をめぐる冒険」に挟まれて、やや地味な感じになっている本作ではあるが、近年のツマラナイ受賞作に劣っているとは思えない。
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