ISBN:4163238409 単行本 朱川 湊人 文藝春秋 2005/04/23 ¥1,650
小さな妹がある日突然、誰かの生まれ変わりだと言い出したとしたら-。大阪の路地裏を舞台に、失われてしまった懐かしさを描く作品集。表題作のほか、「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」など全6篇を収める。

第133回直木賞受賞作。

ノスタルジックな雰囲気の、もっと普通の物語かと思っていたので、あんまり食指が動かなかったのだが、これも朱川作品らしい不思議系の物語だった。「都市伝説セピア」は少しホラー要素が強く、暗い作品が多かったけど、これはもっと温かみのある不思議な話が多い。

体が弱かった在日の少年が、死後トカビ(朝鮮の鬼みたいな妖怪?)になって近所で不思議な事が起こったり、露店で買ったクラゲのような妖精生物の不思議な能力で絶頂体験にハマる少女とか、助からない人の最期を看取り、死の呪詛により苦痛から解放する送りん婆などなど、全てが不思議な物語。

表題作は、前世の記憶を持って産まれて来た妹の話。まだ幼いのに急に大人びてきて、習った事も無い漢字を使い、どこの誰だか知らない人間の姓名を綴り、それが過去の自分であると言うのだ。住んでいた場所が彦根で、家族の名前まで覚えており、自分がどこでどうやって死んだかまで覚えているのである。聞かされた兄は、妹が別の誰かではなく、自分の妹のままでいるよう必死になるのだが……。

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