ISBN:4104596035 ハードカバー 伊坂 幸太郎 新潮社 2007/11/29 ¥1,680
俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか? 二年ぶり千枚の書き下ろし大作。

「娯楽小説」というキャッチがついているものの、単純に娯楽として楽しむには不快な内容だった。首相暗殺の犯人にデッチ上げられて逃げ惑う男の悲劇、これを娯楽と言って良いのか? 娯楽と言うからには、結末にはハリウッドみたいにご都合主義的展開とハッピーエンドが待っているのかと思ったら、悲劇のままだし……。謀略小説とかサスペンスとか言うならまだしも、売るためにこんなキャッチ付けないで欲しかった。

確かに力作ではあるけれども、嫌な展開に嫌な結末。どうもスッキリしない。日本最大の暴力組織に追い回されるし、親友も殺されるしで散々な目にばかり遭う。これはフィクションにすぎないかもしれないけれども、舞台を日本に移し変えただけで、内容はケネディ暗殺事件同様ですから、現実に有り得る(というか、そういう目に遭った人間がかつていた。オズワルドは無念だっただろう)物語である。自分がその立場に陥れられない限りは他人事に過ぎないかもしれないけれども。

首相暗殺程の大きな事件に巻き込まれる可能性はそうそう無いとしても、痴漢や性犯罪の冤罪事件は多々ありますからね。富山でもゲシュタポ(その悪逆非道ぶりから、あえてゲシュタポと言いたい)に誤認逮捕されて有罪になり、強制収容所(あえてこう言いたい)送りにされた人がいたからね。他人事だと思っていた人だって、当局に陥れられる可能性は十分にある訳です。

いくら力作でも、こういう憂鬱な気分に浸れる物語は好きじゃない。

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