秋の牢獄

2008年1月14日 読書
ISBN:4048738054 単行本 恒川 光太郎 角川書店 2007/11 ¥1,470
十一月七日、水曜日。女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。 まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、気付いた時には一人取り残されている――。

惜しい! 題名がこれだから、もう少し早く出せば、もっと売り上げ伸びたと思う。長編ではなく、短編が三つ入っている。

表題作は、同じ一日に閉じ込められてしまった女性の物語。ケン・グリムウッドの「リプレイ」みたいに、同じ人生が繰り返されるのだが、期間がより限定されていて、たった一日となっている。何かをしても、それは翌日には持ち越されない。次の“同じ日”に持っていけるのは記憶だけ。

何度目覚めても翌日へは行けない。閉鎖された時間に囚われていない人々は、全く同じ事を繰り返すのだが、ある日、本来はその場所にはいないはずの人物に出会う。自分と同じ人間に出会い、独りではなくなった彼女は、一日に囚われた人々の集会に参加するようになる。

しかし、閉鎖された一日の無限ループから消えてしまう者もいて、それは北風伯爵と呼ばれる異形の存在の仕業とされていた。北風伯爵に捕まると食べられて消滅してしまうのか? それとも、翌日へ行けるのか?

日本各地の固定された場所に出現と消滅を繰り返し、家守となった者は外に出られなくなる「神家没落」、幻術を使う老婆の後継者となってしまうが、金儲けを目論む悪人に拉致監禁されてしまう女性の「幻は夜に成長する」も面白い。それにしても、何かに捕まってしまう話ばかりだな。

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