ISBN:4048738011 単行本 川端 裕人 角川書店 2007/12 ¥1995
東京近郊、農業と漁業の町、崎浜。二月に花の咲きほこる常春の集落で、重症化するインフルエンザ患者が続出?現場に入った国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員・島袋ケイトは、ただならぬ気配を感じていた。果たしてこれはインフルエンザなのか?ケイトは、総合病院の高柳医師、保健所所員の小堺らと、症例の多発地区に向かう。重症患者が爆発的に増え、死者が出はじめても、特定されない感染源。恐怖に陥った人々は、住民を感染地区に閉じこめ、封鎖をはじめた。ケイトは娘を母に預け、人類未到の災厄を封じこめるため、集団感染のただ中に飛びこんだ―。
首都圏の外れで発生した謎の疫病。たまたま現場に居合わせた国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員、島袋ケイトが未確認病原体の封じ込めに挑む。最初は鳥インフルエンザかと思ったが、それだとあまりにも生々しくなるからか、原因は少し変えてある。
疫病発生と、その後の対応についてリアルに描かれている。しかし、あまりにも優等生的であるが故に、読み物としては少々物足りない面もある。こういう病原体物では、馬鹿な役人の怠慢や自己中心的な医者の暴走により、事態が深刻なまでに悪化して行くのがセオリーだが、この作品には話を盛り上げる悪役キャラが存在しないのである。どことなく、ドキュメンタリー小説のような感じで、淡々と事態が進んで行く。
たまたま発生場所にエリート主人公がいたり、さほど致命的なポカミスもなく政府が動いているのは、ちょっと都合が良すぎる気がする。今の政府の対応を見ていたら、ここまで綺麗に物事が動くとは思えない。
東京都内まで謎の致死性病原体が蔓延したら面白かったのにな(笑)。いや、ブラック・ジョークじゃなくて、鳥インフルエンザの時はきっとそうなりますから! 欧州だとプレ・パンデミック・ワクチンを人数分用意した国もあるというのに、日本はコストがかかるので医療従事者、警察、消防、自衛隊、政治家あたりにしか供給されません。
貴方達が投票した与党の人々は、一人当たり原価ベース1,200円のコストをケチって見殺しにしようとしていますからね。プレ・パンデミック・ワクチンに効力があるのか不明だが、1,200円で助かるかもしれないのに、自分の分だけ確保して人数分用意しないのは酷いと思う。(スイス、英国では全員に接種予定、日本はライフラインを守る人と政治家だけに接種で貧乏人は死ね! という設定)
一説では、国内だけでも600万人死ぬと言われており、その中の1人は自分かもしれない。まあ、ワクチンが無くて死んでも、ちゃんと用意しないような奴らを選んだ国民の責任ですが。無論、俺は投票してないので責任は取らない!
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