ISBN:4103038314 単行本 宮木 あや子 新潮社 2007/2/21 ¥1470
江戸末期の新吉原で、叶わぬ恋に咲いては散りゆく遊女たち。恋する男の目前で客に抱かれる朝霧、初見世に恐怖と嫌悪を抱く茜、自分を捨てた父に客と女郎として対峙した霧里、一生恋はしないと誓いながらもその衝動に抗いきれなかった八津……芳醇な色香を放ち、甘美な切なさに心が濡れる官能純愛絵巻。
デビュー作でこの水準。新しく作られた賞なのに、いきなり凄いのが出てきた。R18なので、女性によって書かれた女性のためのエロス、という事なのだが、オナニーばかりしていて読み手不在な芥川賞系統の新人賞より、遥かに文学していると思う。
5編入っているのだが、ただの短編小説なのかと思ったら、全部が繋がって連作になっていた。浮女たちの不遇が悲しい。体を売るか、村で餓死するか、どちらにしても地獄である。お金が無くて身売りされるのはまだしも、人買いに攫われるような境遇の人もいるのは酷すぎる。自分の所有物じゃないのに勝手に捕まえて売るのは、奴隷制度と同じじゃないか……。
この国に奴隷という階層はなくとも、今も昔も実質的な奴隷は存在している。毎日20時間以上働かされている社畜な人なんて、奴隷という言葉すら生ぬるいけどさ。
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