ISBN:4488017185 単行本 米澤 穂信 東京創元社 2005/7/21 ¥1680
何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。
エリートコースを歩むはずだった主人公は、病気により挫折を経験する。東京から育った町へと戻り、リハビリを兼ねて探偵業のようなものを始める。本当は、単なる動物探しをするつもりだったのに、舞い込んできた仕事は、行方不明になった美女を探してくれというものだった。
探偵になったのを聞きつけた後輩が、歩合で良いから雇ってくれと押しかけてきた直後に、古文書の謎解きという二つ目の依頼が舞い込む。一見すると無関係な二件の依頼だが、途中で繋がって行くのだった。
大抵の場合において、こういう物語は、最後にサスペンスドラマ物のような予定調和の臭い結末に終わるものだが、「犬はどこだ」は違っていた。悪党が滅びる良い結末で、個人的にはこういう結末のほうがスッキリする。悪党天国な日本においては、例え法律で禁じられていても、被害者が自力救済を行い「正義」を貫くしかないだろう。
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