ISBN:4488451039 文庫 米澤 穂信 東京創元社 2006/6/10 ¥780
一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。
ユーゴスラヴィアからやって来た女の子は、この作品で登場した。別の作品を読む前に、ガセネタで釣られたからなぁ(笑)。まあ、この物語に出てきたのはマーヤさんで、クドリャフカさんじゃなかったけど。
ユーゴスラヴィアという国が解体し、世界から消滅していく頃の物語だった。今の中学生が、まだ生まれていない時代じゃないか……。日本にやって来たけれども、アテにしていた知人が死んでいて路頭に迷っていたマーヤさんと雨の日に出会った二人の高校生。彼らは旅館をやっている同級生に頼んで、マーヤさんを住まわせる事に成功する。
物語が始まった時点で、すでにマーヤさんは帰国しており、過去を振り返る形で物語が進む。過去パートは日本を学ぼうとするマーヤさんとの何気ない日常になっている。現在部分では、危険地帯となってしまったユーゴスラヴィアの、一体どこにマーヤさんが戻ったのかを推測するのだが、過去のさりげないシーンや言葉がキーワードになっていたりするので、ちゃんと読まなければならない。
ユーゴスラヴィアの事など何にも知らない高校生視点で物語が進むのだけれども、読み手のほうが、卒論の関係で相当深い部分まで資料を読みこんでいたので、途中に鏤められたヒントもほぼ判ってしまったのが……。当時の情勢を鑑みて、こういう結末になりそうな気はしていだのだけど……。
参考文献リストの書籍は、語学関係以外全部読んだ事あります。この物語は、ユーゴスラヴィアって何? それどこ? ぐらいに知識が無い人のほうが楽しめるかもしれないね。
人類の愚かさ故、人類が存在する限り、戦争が根絶される事は無いのだろうな。
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