ISBN:4757737750 単行本 森 奈津子 エンターブレイン 2008/3/12 ¥2520
鬼才 森奈津子のデビュー作品が完全版となって登場! あたくし、綾小路麗花。私立花園学園中等部の2年生。トレードマークはたてロールのヘアにピンクのリボン。あたくしこそホンモノのお嬢さま。そんなあたくしがある日、万引きに間違われて岡野拓人っていう変な奴に会ったの。あいつに会ってからあたくしなにか変。だけどそんなこと言ってる暇はないのよ。もうすぐはじまる弥生祭の出し物の劇で、主役をねらってるんだから。でもそんな時、すごいライバルが現れて…!

お嬢様独り語りがキツすぎるので、外したかな? と思ったのだが、読み始めると結構面白い。かつて、レモン文庫とかいうレーベルから出ていたものの再録に、短編をつけたものらしい。すでに存在していないレーベルであり、撤退によりこのシリーズも中途半端なままになっていた様である。レモン文庫なんて見た事も無いしな(笑)。

ちなみに、森奈津子はこれでデビューしたらしい。初手からただのラノベ作家ではない。早すぎた才能の悲劇である。これって、今の時代くらいで調度良い感じなんじゃないのか!? 大昔にこういうのが出ても、時代がついて行けないだろう。

ツンデレなお嬢様、お嬢様の忠実な下僕みたいになっているけど、実はその正体がお嬢様以上に……っぽい佐伯、ヲタっぽいけど眼鏡外すと女の子みたいなアクタガワ、強い上にホモ疑惑の杉本、学園の王子様工藤、そして声が山瀬まみソックリなタカりん。

この、山瀬まみソックリ声というのは凄いと思う。もう、あの世代のアイドルで今も現役としてメディアに露出しまくっているのは山瀬だけじゃないか!? これ、他のアイドルにしていたら、今から読む人は「誰それ?」なんて思う時代遅れ作品になっていたに違いない。山瀬まみだけこの平成時代まで生き残ると予知していたのだろうか。森奈津子、恐るべし。

ツンデレあり、謎美少女対決あり、サスペンスあり、善玉悪玉対決あり、BLあり、美少女装あり、言論弾圧に対する独立戦争までありと、今でこそラノベでやっても普通な内容になってきたが、それを全部盛り込んで1991年の時点でやってしまっているのに、凄い才能を感じる。

作者本人も気に入っているようだが、やはり第三話の「お嬢さま帝国」が素晴らしい。通っている学園は私服なのだが、ある生徒の母が作ったというデザイナーズブランド制服を着て、メディアに露出しようというクラス運動が始まり、次第にそれがファッショ化していくのである。お嬢さまは、それに同調せず、教室内の一部を綾小路麗花帝国としてクラスからの分離独立を宣言するのであった。

女帝麗花を頂点とした帝国に翻弄されるクラスメイト達。抗議の言葉は、国境警備隊長の杉本→工藤大臣→佐伯侍従長とたらい回しにされてしまう。そして、帝国側はクラスメイトを無視したまま、ティータイムの準備を始めてしまうのが笑える。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索