北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く
2008年9月6日 読書ISBN:4106036037単行本 北村 薫 新潮社 2008/05 ¥1,365
「早稲田大学で教えた二年間、教室でこんな事を話していました」—ドラマ、映画、落語、朗読、短歌、舞台美術、音楽…さまざまな表現に“スパークする”小説家の創作魂。「その人でしかありえない」表現の秘術。より深く味わうための心得、「伝える」こと「分かる」ことの奥義。小説家の頭の中、胸の内を知り、「読書」で自分を深く探る方法を学ぶ。
これは2005年度、2006年度に早稲田大学で行われた講義が元となっている。大学の講義は睡眠兵器かと思いたくなるようなクソツマラナイものが多いのだが、こういうのなら受けてみたい。
材料として、当時駆け出しの三浦しをんを扱っているのだが、北村本人が獲れないのに、三浦しをんが先に直木賞作家(しかも、あんな微妙作で!)になってしまったのは辛いなぁ。ミステリー畑は不遇なので、選考委員を入れ替えない限り、今後もこの状況が続くのだろうけど……。
終わりの方に赤木かん子の手書き文章がそのまま載っているのだが、これは秀逸である! 東京に雪が積もった日、彼女はかまくらを作るのだが、脚色して作文に躍動感溢れる文章を書いたところ、先生からの一言は「ウソを書くのはやめましょう」であった。これが原因で、彼女は心に深い傷を負うのであるが……。まさに、天才と凡人が出会った際に生じる典型的な悲劇である。人は、自分よりレベルの高い人間を教える事など出来ない。彼女の悲劇は、自分よりもレベルが低い先生に当たってしまった事にある。この文才を見抜けないなんて、この先生は相当阿呆に違いない。
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