不思議じゃない国のアリス
2008年10月22日 読書ISBN:4062120496 単行本 沙藤 一樹 講談社 2003/10 ¥1,575
乙一氏絶賛!!
「この本、運転手が沙藤一樹でなければ、きっと旅は快適だったでしょうに」
とかキャッチついているから期待したら、見事にハズれた。
巷での評判は悪くないが、個人的には微妙。意味不明系の内容で、オチにもキレが無い。キレが無いどころか、何を意図しているのか掴めない難解な終わりのものもあって、どうにも読後感が宜しくない。単にノワール系だから受けているんじゃないだろうな!?
表題の「不思議じゃない国のアリス」も、修学旅行の事故で唯一生き残った女性が不思議少女アリスと出会う摩訶不思議系の物語かと思ったら、風邪で寝込んで修学旅行に参加しなくて生き残っただけじゃないか! 本当に不思議でも何でもないツマラナイ話になってやんの……。アリスという固有名詞に見事騙されました。
「青い月」も、クローンを題材にした、ありがち設定。というか、このパターンは書き散らされたネット小説でも非常に多く見られます。つまり、月並み。題名が月だから、月並み設定にしてみたとかいうブラック・ジョークじゃないだろうな!?
「飛行熱」は、ホンモノ人間とニセモノ人間がいて、ニセモノ人間を殺す話だが、その相違は全く述べられないし、ミサイルが飛んでくるという社会情勢も全く語られない。実際のところ、ホンモノとニセモノの違いなど無いし、予想出来てしまう展開で捻りが無い。
「空中庭園」は、ネットゲームを題材にしているから結構好きだけど、意図的にか、作者がMMOを知らないのか不明だが、非常に古臭いテキストなのが萎える。ドラクエでもやっている感じで非常にウソ臭い。MMOって、もっと派手でスピーディだって。こんなチマチマしたゲームは数十種類覗いてひとつも存在しなかったぞ。意図して古臭い形式にしているのだとしても、川端裕人の「The S.O.U.P. 」で登場するバーチャルワールドの描写には遠く及ばない。最後のオチも解りにくい。
「銃器のアマリリ」は、少女の妄想なのか現実に存在する異形か、羽根の生えたアマリリという少女が現れて、周囲の人間を銃器で虐殺しまくるという、いかにも昨今の歪んだお子様が好みそうな内容。実際に死ぬ訳ではなく、後で何事も無かったかのように元通りになっているので、復元されただけなのか、逃避による単なる妄想なのか判別出来ない。
「旅をする人」は、短いけれども、ちょっと気味悪い設定。こういう感覚、死後の世界が存在して自縛霊にでもなれば体感するのだろう……。
「この本、運転手が沙藤一樹でなければ、きっと旅は快適だったでしょうに」
うん、運転手が乙一だったら、この素材でもきっと面白く纏っていた。
この言葉はもしかして、そういう皮肉を言いたかったんじゃないの?
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