ISBN:4104722030 単行本 平山 瑞穂 新潮社 2007/03 ¥1,575
なんだか、題名だけ見るとSFっぽいのだが、全然違う。ちょっとやるせない感じの青春物語。
偶然見つけたホームページで淫らな画像を掲載しているのは、あの娘かもしれないと男は思った。顔は隠されているものの、同姓同名の女性が作るページの記録に、あの夜の出来事が書かれているのを読み、それは確信へと変わっていく。
かつては素朴で純情、今ではやり手に華麗なる変身を遂げた男と、出会う男に翻弄されて少しずつ人生が狂っていく女の、二人の主人公視点から物語が綴られる。せつなく、やるせない物語だが、今回も上手い! この作品は微妙という声が多いけれども、飽くまでも平山瑞穂著作としてはという但し書きがつくべきであって、やはり高水準な出来だと思う。ごくごく平凡な物語なのに、最後まで飽きずに読ませる。
嫉妬して女を追い落とそうとする汚らしい友人や、ストーカーっぽい金持ちバカボン、他人の業績を掠め取る糞男など、脇役も非常にクセがあってよろしい。人間の汚らしさがよく描かれている。
あの日が人生の分岐点だったかもしれないと、再開した二人は思う。互いに自らが歩んできた道を修正するために、お互いの軌道が一瞬だけ交差する。しかし、人生をあと戻りする事は出来ないのだ。あの日、もしも一緒に過ごしていたらどうなっていたかと想いを馳せながらも、もう二度と交差する事は無いであろう互いの人生へと踏み出していく。
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