月光ゲーム―Yの悲劇’88
2008年11月5日 長門有希の100冊ISBN:448841401X 文庫 有栖川 有栖 東京創元社 1994/07 ¥735
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々を、予想だにしない事態が待ち構えていた。山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われたように出没する殺人鬼! 有栖川有栖のデビュー長編。
長門有希の100冊No.04「双頭の悪魔」を読むために。
長門有希100冊にある「双頭の悪魔」を攻略しようと思ったところ、これは有栖川有栖の学生アリスシリーズ三作目だと知る。という訳で、これを攻略する為には「月光ゲーム」→「孤島パズル」→「双頭の悪魔」→「女王国の城」と進める必要が出てきた。
これも、長門有希に薦められなければ読む事は無かったかもしれない。ある程度物語が進んだ時点で作者から挑戦状が叩きつけられる。その時点までで、犯人を特定するための情報は与えられているというのだ。これは少し新鮮。意外に、作者vs読者で正々堂々と戦われる推理物って少ないからね。名探偵だけが推理していたり、読み物としては面白くてもヒントは不足していたり、酷いのになると、作中に犯人が登場していないなんてルール違反もあって、絶対に読者が解けなかったりするからね。
さてさて、有栖川有栖から挑戦状を頂いた訳ですが、ここは5秒で降伏! いや、頭が硬いから推理は苦手だしさ……。最大に盛り上がっている冒頭を無視すると、とりあえず始まりには4人しかいないのだが、山登りの最中に他の大学と合流して、登場人物が17人に増えてしまうのだ。いきなり増えるから、全員覚えられません。これではもう、謎解き以前の問題である。
山の上でキャンプ中に火山が噴火して下山出来なくなるのだが、そこで連続殺人事件が発生。下界とは隔離されているのだから、そこにいる誰かが犯人だという密室状態なのだが、人が多すぎる……。これ、ラノベみたいに全員のイラストつけてくれたら良いのだけど。せめて登場人物一覧表くらいは欲しかった。わざわざメモする気力は無かったし。文庫版とか、新しいやつには付いていそうだけど、図書館にあったのは初期の単行本だから、ついてませんでした……。
そういう訳で、早々に謎解きはギブアップ。有栖川有栖の勝利となったのだが、謎解きしなくても、普通に読むだけで面白いからOKです。推理主体なので、登場人物の描写がアッサリ風味だけど、推理するためのヒントも鏤めつつ、キャラ描写まで濃くしてしまうとアレステア・レナルズみたいな厚さの本になりそうなので、これは仕方が無いだろう。
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