ISBN:4488414028 文庫 有栖川 有栖 東京創元社 1996/08 ¥693
英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、早速宝捜しを始める三人。折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!
長門有希の100冊No.04「双頭の悪魔」を読むために。
一作目は火山噴火で下界と切り離された山中で連続殺人事件が起こったが、今回は孤島が舞台。江神先輩とアリスだけが登場、他の人は姉の結婚式と教習所合宿のため、プロローグ部分だけで退場。代わって紅一点、マリアが登場する。
マリアに誘われて島にある宝探しに挑戦する事になった江神先輩とアリスだが、お約束通り、外界から隔離された島で人が殺されて行く。孤島物と言えば、何者かの手によって、次々と人が殺されていき、お互い疑心暗鬼に陥るというのがセオリーだが、有栖川有栖作品では、そこまでむやみやたらと人が殺されまくったりはしない。登場人物の大半は殺されずにすむので読み物としては少し地味になるかもしれないけれども、その分、リアリティは増している。小説ならともかく、実際にはそう都合よく人が殺されまくり、しかも犯人が判らないなんて事はなかなか考えられないからね。
リアリティ以外の面でも、殺される側が限定されるのには理由がある。ある程度進んだ時点で、作者から読者に挑戦状が送られるのだ。その時点までで、犯人を特定するためのヒントが読者に与えられているのである。むやみやたらと殺してしまったら、死体だらけになってしまうので、生き残りから犯人を捜すのが簡単になってしまう。
今回は、ちゃんと登場人物表がついていたので助かった。しかし、挑戦は華麗にスルーして最後まで読み進めた。推理苦手だし、頭硬いから絶対に無理! 最後のほう、嫌な展開になってきたけど、あの人が犯人じゃなくて良かった。今回もアリスは失恋モードでほろ苦い結末へ。
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