ISBN:4087748308 単行本 三崎 亜記 集英社 2006/11 ¥1,680
30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか? 悲しみを乗り越えることはできるのか? 時を超えた人と人のつながりを描く、最新長編900枚。

第136回直木賞候補作。

賛否両論、読み手により当たり外れの大きい本書であるが……。勘弁して下さい。面白くない。ハイパー面白くない! これはもう三浦しをんどころではない。30年に一度町が消滅するという、とても魅力的な世界設定なのに、その特異な現状に成す術も無く翻弄される人間模様が主体であるが故に、魅力半減。淡々としすぎで盛り上がらないし、特殊な設定なのに十分な情報が与えられないので、読んでいて苦痛すら感じる。

町の消滅という現象について、語られない部分があまりにも多すぎて上手く物語に入り込めない。不親切なまでに説明が不足しているので苛立ってくる。意図的にやっていると見る向きもある様だが、本作品では説明されない事によるメリットは見当たらない。平山瑞穂の「ラスマンチャス通信」のように、描写や説明を省略する事によって物語の不気味さが増す様な場合にはやる意味があると思うが。作者は自らの脳内妄想でこの特殊な状況を把握しているだろうが、読み手はちゃんと説明して貰わないと理解出来ません。

「ニルスの不思議な旅」に出てくる封印されてしまった町や、手塚治虫の「プライムローズ」みたいに町が未来世界へ移転させられてしまうような物語を期待していたのだが……。消滅してしまうという部分だけ見ても平山瑞穂の「忘れないと誓った僕がいた」に負けている気がするよ。

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