ISBN:4334926010 書籍 三崎亜記 光文社 2008/3/20 ¥1470
戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母とすごすことになった園子の一家。避難もせず、防音スタジオも持たないが、果たして無事にのりきることができるのか――。
表題作ほか書下ろし1編を含む全9編。眩いほどに不安定で鮮やかな世界を見せ付ける、贅沢な傑作短編集。
第139回直木賞候補作。
長編かと思ったら、9編入った短編だった。表題作だけでなく、どれもこれも有り得ない設定のズレた話ばかりである。この作家は、実際には有り得ない妙な物語を書くのが好きだな。
表題作は、台風みたいな感じで鼓笛隊が上陸して各地に被害をもたらすというもの。他にも、「失われた町」みたいな感じで電車が忽然と消滅してしまった後に残された人々の話や、隣町に住んでいるカップルなのに、片方が上空の都市に住んでいるので数ヶ月に一回しか逢えない話など、全てが有り得ない物語となっている。
淡々として盛り上がりに欠ける作風なので、長編だと疲れるのだが、短編は妙な物語のエッセンスだけ楽しめば良いので読みやすい。有り得ない設定に関しては、難癖つけるのではなく、ファンタジーの一種だと思って読めば良いと思う。
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