空を見上げる古い歌を口ずさむ
2008年11月30日 読書みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える―。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く“サクラバ”や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作。
第29回メフィスト賞受賞作。
メフィスト賞なので、またゲテモノなのかなぁと思いつつ借りてきたのだが意外に良作。ノスタルジックな雰囲気漂う不思議な物語だった。
子供の1人が他人の顔がのっぺらぼうにしか見えなくなってしまう。20年前に姿を消した兄に「いつかおまえの周りで、誰かが『のっぺらぼう』を見るようになったら呼んでほしい」と言われていた男は、兄を探す事に。
出だしは弟なのだが、兄が現れた後は最後まで兄視点で物語が進む。自分たちが育った町で起こった出来事を兄が語り出す。急にのっぺらぼうが見えるようになってしまった兄。その後、次々に事件が起こる。仲良くしていた警官が拳銃で自殺したり、遊んでいた仲間が行方不明になったり、一見バラバラに思える出来事が次第に繋がっていく。
人知れず、正体不明の何かが戦っているというのは、恩田陸の「オセロ」っぽい。
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