戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか―史実を踏まえながら奔放な想像力で描く中島敦記念賞受賞作。
第104回直木賞候補作。
中国が秦によって統一される前の乱世が舞台。当時、非攻を是とする謎の集団がいた! 頼まれた弱小国に赴き、無条件で敵から守るのだ。たった一人で燕の小城を守りに来た墨家教団のひとり、革離。攻め寄せる趙の大軍を前に、女子供まで総動員して敵に当たる。
墨家って恐ろしいな。ある意味、究極の全体主義だな。ヒトラーやスターリンがやったみたいな、誰か1人の為の全体主義ではない。まるでスタートレックに出てくるボーグみたいに個を排除して統制の取れた全体主義。こんな、蟻みたいな軍隊になってしまえば、そりゃ趙の軍隊は苦戦するだろう。
そんな革離が、最後の最後で敵の計略を見破られないとは、物語としては小奇麗な終わり方だけど、非常に嘘っぽい。機械のように理論武装しても、人間の感情までは計れないのである。信賞必罰は必要だけど、何事もやりすぎは良くないです。
コメント