ISBN:4103020318 単行本 島本 理生 新潮社 2007/03 ¥1,365
徹平と暮らし始めて、もうすぐ半年になる。だけど手放しで幸せ、という気分ではあまりなくて、転覆するかも知れない船に乗って、岸から離れようとしている、そんな気持ちがまとわりついていた――。新しい恋を始めた3人の女性を主人公に、人を好きになること、誰かと暮らすことの、危うさと幸福感を、みずみずしく描き上げる感動の小説集。書き下ろし1編を併録。

第135回芥川賞候補作。

随分上手くなってきた。とは言っても、初期の二作しか読んではいないけれども。もしこれを高校生くらいで書いてデビュー作だったら、話題性で芥川賞取れたかもしれないのに。惜しい。他の若手と少し違うと思ったら、島本理生は群像新人文学賞受賞組なんだな。道理で文藝賞の奴らとは毛並みが違うわけだ。ちなみに、群像新人文学賞は村上春樹、村上龍も受賞している由緒正しき? 賞なので、やはり有象無象の新人賞とは違うのでしょう。とはいっても、最近は妙なのも受賞してますが……。

表題作は、今は無き父が未だにトラウマとなっている女性の話。悪い子は大きな熊が来て食べられてしまうと聞かされ、逆に熊が来て父親ごと自分を食べてしまう事を望んだままに、大人になってしまった不安定な女性の心情を描く。もう少し抉り込んだら芥川賞に届いたかも知れないのに、惜しい。でもこの回って伊藤たかみが受賞してるんだよな。その次は青山七恵だし、その程度なら島本理生にもダブル受賞であげてしまって良かったんじゃないのか? どうせイロモノなんだし(笑)。というか、今からでも太宰にあげろよ! もう本人いないけどさ。なんで太宰が貰えないものを、伊藤とか青山が貰っているんだ!?

「クロコダイルの午睡」は、色気の無い女と、彼女がいるクセに上手い手料理が食いたくて通ってくる男の微妙な関係を描いた作品。苦労しているとは言え、せっかく女に生まれておいて、それを武器として使わないのは頂けません。一説によれば、女は結婚するまでに男が費やしてくれるお金が一千万円くらい差が出てしまうらしいからな。武器にしないと損だ。俺が女に生まれていたら一億は貢がせているだろう。

「猫と君のとなり」は、個人的には一番好き。猫が出てくるからか!? モテナイ女が酔っぱらった学生時代の後輩を介抱して、翌日告白される話。なんか、島本理生の小説にはモテナイ女がたくさん出てくるな。地味だけど背伸びしない日常視線でいいと思う。エンタとしては物足りないから、賞を目指すならもっと金原とか綿矢みたいにあざとくやったほうが良いだろうけど。

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