ISBN:4488023932 単行本 桜庭 一樹 東京創元社 2006/12/28 ¥1,785
「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!

第137回直木賞候補作。

鳥取の名家を舞台にした、三代に亘る女の物語。三部構成で祖母、母、娘と主人公が変わるのだが、全体を通して娘による視点で、一部、二部は過去の出来事となっている。

正体不明の民に置き去りにされ、拾われて育てられた祖母が名門、赤朽葉家の嫁に指名されてしまう第一部。この祖母は千里眼を持っており、少しだけ不思議な話。第二部は自由奔放に育ち、不良娘として中国地方制覇に燃えるレディースの頭、引退後はその体験を描き少女漫画家として大成するも、それがライフワークであったかのように、最終回を描き切った直後に燃え尽きる。三部はごく普通の女性で、印象としては一番弱い。

各時代ごとの出来事に翻弄されつつも生き続ける一族絵巻といった感じだが、物語が中国地方に限定されているだけに、ジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」や「ロスノフスキ家の娘」を、スケール小さくした感じが否めない。

もう少し不思議テイストがあれば良かった。千里眼能力が代々引き継がれたら、もう少し面白かったのだが。それにしても、ラノベから出てきた作家が直木賞候補に名を連ねるまでになるのは凄い。

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