人は変化する世界を言葉によって把握する。どんな状況においても、言葉を媒介に誰かと繋がっていたいと願う…。語られることによって生き延びてきた物語である「日本昔話」を語り変えた書下ろし7編を収録。

第133回直木賞候補作。

三浦しをんの小説は、あんまり面白くないと聞いたのだが、そう悪くもないと思う。一見すると普通の短編でありながら、実は繋がっていて連作になっている。どこがどう繋がっているのか判らない話も入っていたが……。

それにしても、昔話と書かれた物語の関連性がよく判らない。昔話を元ネタにインスパイアされたものを書いたのか? あまりにも昔話とかけ離れた内容で、一体、三浦しをんが何をしたかったのか、その意図が掴めない。

ありがち恋愛小説がたくさん入っているだけかと思ったら、地球に巨大隕石が衝突して滅びるというSFネタが背景になってきて、ごく一部の人間だけが火星や木星へと逃れる事が出来るという事で、助かった者、死に行く者の一人語りとなる。

せっかくのSF設定だが、致命的な欠陥があって、一気に萎えた。木星圏まで宇宙船で20年程。しかし船内では1年しか時間か経過していないという記述がチラリと。シリウス経由で木星まで行ってるんでしょうか? 三浦しをん、ウラシマ効果を正しく理解していないのでは!? 

時間の流れが変わるのは、亜光速に到達してからですからね。宇宙船で20年で船内が1年なら、加速減速の時間を差し引いても、20光年以内のかなり遠方まで飛んでいないとおかしい。ちょっと調べられなかったのだが、ウラシマ効果が得られる速度で冥王星まで飛んでも5時間程。木星なら2〜3時間くらいでいけるのでは? (ちなみに、太陽まで8分、月へは1秒!)もっとも、そんな急激に加減速したら、中にいる人間は死ぬでしょうけど。

つまり、木星まで20年かけて到達しているのに、宇宙船の中は1年しか経過していない三浦しをん設定だと、とてつもなく遠回りしているとしか考えられないのだ。シリウス星系なら片道8.7光年。地球からシリウス経由で木星行き、人類が死なない程度の加減速にかかる時間を計算に入れると、まあ妥協できる範囲なのではないでしょうか……。

それにしても、核融合エンジンごときでは亜光速は難しいだろう。ウラシマ効果が見られるという事は光速の90%以上は出せるテクノロジーを有しているという事で、宇宙船の動力は少なくとも対消滅エンジン以上。ならば接近してくる小惑星に対消滅爆弾をぶち込んで破壊すれば人類は滅亡しないだろうに……。

参考計算式(ネット上で正しく記述するのはブログだと無理なので、各自確認して下さい。)
Δt´=1/√1-(v/c)2Δt

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