ヒトゲノム・センターに勤務する気鋭の遺伝子学者ピエールは、帰宅途中、ネオナチの暴漢にあやうく殺されそうになった。ネオナチとなんの関わりもないのに、どうして狙われたのか?やがて、自分が連続殺人事件にまきこまれていると知ったピエールは、事件の謎とみずからの研究課題であるヒトゲノムに隠されている秘密に命がけで挑んでいくが…ネビュラ賞作家ソウヤーが、遺伝子研究の問題をスリリングに描く、会心作。
密林で検索したら、「フレームソフトでよろしいですか?」と聞いてきた。
……よろしくねえよ、おバカ!(笑)。
では、気をとりなおして。
SF文庫で出版されているけれども、これはSFではなくてミステリーだと思う。ヒトゲノムに隠された暗号解読に挑む遺伝子工学者ピエールは、帰宅途中にネオナチに襲われて殺されそうになる。直後、物語の舞台が第二次世界大戦中の収容所へと飛ぶ。ユダヤ人を虐殺する収容所で、ナチに加担する残虐なウクライナ人。
この時点では、ナチによる過去の忌まわしい出来事と、遺伝子工学者ピエールの関係は見えてこないのだが、細部に鏤められた、一見無関係な出来事が、ラスト付近へ向けての伏線となって行く。
ピエール自身が体内に抱え込むハンチントン舞踏病という死の時限爆弾。妻となるモリーの超能力、二人の間に産まれる娘の正体、ある保険会社が高収益を出すためのからくり、弱者を暗殺していくネオナチ。後半へ向けて一気に明かされていく謎、伏線の張り具合が絶妙である。
SFっぽさは感じないけど、キングやクーンツの良作を読んだ時の様なサプライズがある。
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