素朴で真面目で礼儀正しくて。一見ふつうの5年生だけど彩乃ちゃんには、見えている。周りの人のちょっとした未来。うまくいかない相手と仲良くする方法。幸運をよぶ少女と迷える人たちのひと夏のできごと。注目の著者が描く優しいファンタジック・ストーリー。
彩乃ちゃんという名前の、特殊な力を持った少女が新興宗教の二代目教祖として登場する。題名がコレだから、彩乃ちゃんが主人公だと思っていたら違った。
夜散歩、石階段、夏花火と三編ある短編に異なる三人の主人公が登場し、各人物の人生に一部関わる事になるのが彩乃ちゃんである。彩乃ちゃんは祖母から受け継いでしまった不思議な力で未来まで視えるらしく、それぞれが彩乃ちゃんのお告げを受ける事になる。
「夜散歩」では、教祖が亡くなり、教団内部の権力争いによるゴタゴタから守るため、ある男が彩乃さまを預かってくれと智佳子に頼み込んで来る。半ば無理やりな感じで彩乃ちゃんを預かる事になるのだが……。
続いての「石階段」は、人を利用する術に長けている同級生に誘われたまま、たったひとりで山に埋もれている石の階段を掘り出す事になってしまった男子高校生に彩乃ちゃんが絡んで来る。智佳子に貰った物を持っているので、これは時系列でも二番目の話。
最後の「夏花火」は、彩乃ちゃんと同世代の少女が主人公になる。東京と田舎のギャップで、上手く地元民と溶け込んでいない佳奈の現状も視えてしまう彩乃ちゃんが貸してあげたのは、先の二編で貰った大切な物。
予知能力により不思議な力を使う彩乃ちゃんだが、それほど派手な力技ではなくて、よく注意していないと見落とす程の、些細なお告げしかしていない。大人の事情によりあちこちに連れて行かれているのだが、全てが視えてしまう為なのか、まだ少女なのに超然としているのが魅力的である。
やや淡々としすぎなので、派手なのが好きな人には物足りないかもしれない。
コメント