「退化」の進化学(講談社ブルーバックス1537)
2009年3月19日 読書サメの顎が退化した耳小骨、トカゲの眼のなごりの松果体、舌にのこる「二枚舌」の痕跡、男にもある「子宮」、サメ肌から生まれた歯など、祖先とは機能を変えたり、失ったりした器官をみれば、ヒトの進化の道をたどることができる。
退化と聞けば、進化の逆で旧式に戻されるようなイメージがあるが、工業製品ならともかく、生物学では事情が違ってくるようである。進化も退化も進行方向は同じで、生存により適した形態に変化していくというイメージがより正しいのだろう。
必要な部分は進化して行き、使わなくなった部分は退化して行く。それは決して旧バージョンに戻ってしまうのではない。退化も進化の一形態なのだ。それにしても、生き物が自ら望んでいる訳でもないのに、遺伝子が都合の良いように体を変形させていくというのは、非常に上手く出来ているけれども、ある意味、怖い話ではある。
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