人形作家 (講談社現代新書1633)
2009年4月15日 読書青白い肌と遠くを見つめているようなガラス玉の瞳を持った、リアルで美しい人形を作り続けている四谷シモンの自伝である。日本を代表する人形作家であり、俳優でもある彼の、生い立ちから創作の秘密までが、みずからの筆で語られる。これまでの作品の写真が豊富に掲載され、後半では制作現場の様子も紹介。人形作りの実践にも参考になる1冊だ。
四谷シモンの半生は、波乱万丈という言葉すら生温い。もう、無茶苦茶すぎ、壊れすぎである。どれほど苦難の人生が待ち構えていようと、最後に辿り着くのが「成功」と呼ばれる場所ならば勝ち組なのだが、この人に関してはちっとも羨ましいとは思えない。例え人形作家として大成したとしても、こんな鬼のような人生は嫌だなぁ。
しかし、この無茶苦茶な少年時代から青年時代が無ければ、ここまで完成度の高い人形は作り出せない気がする。きっと、苦難の歴史も何らかの肥やしにはなっているに違いないのだが、少し間違えれば単なる狂気で終わってしまうんじゃないだろうか。見事に昇華して、人形に妖しい魂を吹き込む四谷シモンは凄すぎる。
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